ピエタ、あるいはラクリモーサ
台風が来るたび、秋が深まっていくようだ
たびたび光を求めて空を眺めやるが、
重く厚い雲が視界を占める
世相を覆う暗雲にも似て、と思うが、
荒れ果てた人々の心のようにも見える
ミケランジェロ 『ピエタ』 サン・ピエトロ大聖堂 1499年
ときに人生は過酷で、理不尽だ
暴走車が、通学の子らをなぎ倒し
少女は路上の狂刃に倒れ
病院の防火扉は閉まらず
斜面を下る火山灰の泥流を止める術もない
ダ・ヴィンチ 『女性の頭部の習作』 ルーヴル美術館 1490年頃
神はいるか、正義はあるか
それでも人は耐え、
僅かばかりの希望を探し
空が晴れやかなれと願う
きっとまた、時間はゆるやかに動き出し、
喪失は、希望へとよみがえるに違いない
そして、いつしか記憶の中の小さい墓標に、
暖かい陽ざしが満ちる日も来るだろう
きみに聞こえるだろうか
暗天に響くラクリモーサが