遥かなる「知」平線

歴史、科学、芸術、文学、社会一般に関するブログです。

2012-01-01から1年間の記事一覧

太陽の質量

太陽は動かない(レオナルド・ダ・ヴィンチ 1452-1519年) (注)コペルニクス(1473-1543年)の太陽中心(地動)説を述べた『天球の回転について』が刊行されたのは1543年3月、ダ・ヴィンチが死んで24年後のことである。 私は天を測った。そして、今、影を…

基督降誕祭(クリスマス)前後

いつも満天の星とは限らない厚い雲に覆われた地上に光は弱く都会を淡く映し出している 北風は冷たく頬を叩き時おり、小さな雪片を遠くから運んでくる そんな空の下でも、日本のクリスマスは賑やかだ キリストとは無縁な人々に、 恋人たちに、そして子供たち…

2012年 読書総括

『死にもの狂いの剣士と、満足した豚からも等距離に離れていたところで、そんなのはただの凡庸じゃねえか』(作者不詳) どこか遠くの彼方には難破している人たちがいるんだ、こんなに多くの難破を前に腕をこまねいてはいられない、我慢しろ、今、ぼくらのほ…

二番になったスーパーコンピューター

一つの国が滅びの道を突っ走りはじめるときというのは、恐らくこうなのだ。… たとえようもなくひどい知力の衰弱が社会をおおっているため、ほとんどの人が、ちょっと考えればすぐわかりそうなものがわからず、ちょっと目をこらせばみえるはずのものが見えな…

コンちゃんの愛読書

読書は充実した人間をつくり、会話は機転のきく人間をつくり、書くことは正確な人間をつくる。(フランシス・ベーコン;哲学者) 本物の読書は、人を別人にする。(桜庭一樹)(注)彼女の読書体験も、シャーロックホームズから始まった。そして「生涯の一冊…

ダ・ヴィンチ モナ・リザ

第二のモナリザ(3) 見解は重要だ。原理は重要だ。言葉は重要だ。きみの言葉はなによりも重要だ。きみの言葉は、きみという人間なんだ。 これが最後の教訓だ、ジャック。きみはここに立脚しなければならない。トム・クランシ― 『いま、そこにある危機』 文…

第二のモナ・リザ(2)

「なあ、ユリアン、ものごとって奴は、最初のうちはなかなかうまく運ばないものでな・・・」 「時間がたつと?」 「だいたいは、もっとひどくなる」(田中芳樹 『銀河英雄伝説』 徳間書店) 前回に引き続き、『第二のモナ・リザ』に関係する人々の歴史的な動…

第二のモナ・リザ(1)

なぜ夢の中では、目が覚めているときに想像力によって見るよりも、はっきりと物が見えるのだろう(ダ・ヴィンチ) この話題も少し時間が経ってしまった。が、モンモとしては書かなくてはなりますまい。ダ・ヴィンチは連載中なので、『モナ・リザ』は最後のほ…

2012年ベルリン国立美術館展

人はみな生まれながらにして自由を求め、隷属を嫌う。(カエサル「ガリア戦記」) 自由を愛する者は、ごくわずかしかいない。 大半の者たちは、 公平な主人を求めているにすぎない。(サルスティウス「歴史」) 先にベルリン国立美術館展のフェルメール『真…

フェルメール 真珠の首飾りの少女

だれにでも、そんなひとときがある まるで物語のなかの主人公のように絵の中に立ちつくすのだ フェルメール 『真珠の首飾りの少女』 1662‐1665頃 ベルリン国立絵画館 あなたの想いが、わたしの願い私の願いが、あなたの夢 柔らかい季節の光に満たさ…

「ABC予想」の証明

人生におけるもっとも幸福なことの一つは、 極め得るものを極め、 極め得ないものを静かに尊敬するにある。(ゲーテ)(注)しかし、ゲーテ自身は、83歳の生涯で2週間しか幸福な時はなかったと言う。 一か月ほど前の新聞に、京大の望月教授が「ABC予想」を証…

iPS細胞 祝2012年ノーベル生理学・医学賞

予想以上に生物の体はすごい・・・私たちの体には、非常に高い柔軟性がそなわっている 人体にも実はもっとかくれた能力があるのではないか・・・人では手足が切断されると生えてこないが、それは今できないだけで、50年後、100年後、200年後もほんと…

リリちゃんの叫び

自分よ自分よ、なにゆえ不毛に御活躍?(森見登美彦 『夜は短し歩けよ乙女』角川文庫) 人生で有意義なことの大半は、無駄に見える。(伊坂幸太郎 『オー!ファーザー』 新潮社) A Girl with a Watering Can(1876)Auguste Renoir(1841-1919)National Galler…

2012年マウリッツハイス美術館展(2)レンブラント

最も才気ある者は、最もみじめな思いをせねばならぬ。最も過酷な使命を負わねばならぬ。それは天の摂理…。世人の決して理解できぬ労苦をなめねばならぬ。 人間はできないと思ったら、まっすぐ歩くことだってできやしねえんだ。町に出て、ぐうたら生きている…

2012年マウリッツハイス美術館展(1)

実際に戦う者が、何が必要か決めねばならない。会計係の仕事は、それを予算のなかで実現できるよう知恵をしぼることだ。 確執は当然ある。が、決定を下すのは、実際にものをつくったりする者たちであるべきなのだ。 真に良質な人間たちは、自分たちが求めら…

フェルメール ディアナとニンフたち

苦しみつつなお働け。安住を求めるな。この世は巡礼である。(黒木ひとみさん20歳の時の言葉 宝塚月組) 艱難は忍耐を生み出し、忍耐は練達を生み出し、さらに練達は希望を生む(野阿 梓 『黄昏郷』 早川書房) 9月17日まで上野の東京都美術館で開催されて…

フェルメール 真珠の耳飾りの少女

いつのまにか 青い空がのぞいてる思いつめた黒い雲は 逃げてゆく君はどこで生まれたの 育ってきたの君は静かに 音もたてずに大人になった 白い膚が 光に触れ まぶしそう髪の色は 青い空に浮きたって燃える夏の太陽は そこまできてる君は季節が変るみたいに …

「常識」と「普通のこと」

みんな頭を痛めてるんなら、なぜ対策をとらない?だが、それが人間の性質というものだ。手遅れになるまで、だれも対策を講じようとはしない。 交差点の構造が問題になるのは、子供が事故死したあとと決まっている。(マイクル・クライトン 『プレイ』 早川書…

追悼 ニール・アームストロング

「あのマットレスの向こうを覗いて」と言った。そこには巨大な虫が死んでいた。「でも誰にも言わないでね」とエミリーはささやいた。 次に少女は彼を自分の寝室に連れて行った。「これが私の時計、これが私のランプ、これが私の鏡、これが私の本よ。これはく…

ロンドン五輪 「なでしこ」とフェルプス

歴史を刻むということは、自分を追求して一歩一歩、紆余曲折しながらたどるうち、図らずも到達する金字塔なのだろう。(結城和香子 読売新聞編集委員) ここで体験したどんな瞬間も、すべて僕の中に永遠に残しておきたいと思っていた。一つ一つを心に刻み込…

ダ・ヴィンチ ジネヴラ・デ・ベンチの肖像

レオナルド・ダ・ヴィンチの生涯 (6) リアルは、創作を越えて刺激的に見る者の脳に飛び込む。(君塚良一)(注)「事件は会議室で起こっているんじゃない、現場で起こっているんだ」の脚本家。 過去は変えられないもの。未来は見ようと努力するもの。そし…

ヴァレリ 「海辺の墓地」から(2)

Le vent se leve.Il faut tenter de vivre!風がたつ・・・いまこそ生きようとしなければならぬ(ポール・ヴァレリ 1871.10.30-1945.7.20) ユトリロ ノートル=ダム・ド・ボンヌ・ギャルド大聖堂 1925年 「生への確信」をなかなか掴…

ヴァレリ 「海辺の墓地」から(1)

ああ 思念のはての慰めよ 神々の静けさへのひたすらな凝視よ(ヴァレリ「海辺の墓地」から) 南仏セート 海辺の墓地 大学を出て就職したとき、東京に何冊かの本を持ってきた。シェイクスピア2冊(新潮社・世界文学全集)、辻邦生の『背教者ユリアヌス』と『…

ヒッグス粒子の発見

誰がこんなものを”注文”したんだ!(注)予測もしていない素粒子(ミュー粒子)が実験で見つかった時の物理学者たちの反応 生きているうちにこの結果を見られるとは、信じられない。ピーター・ヒッグス(英;物理学者 83歳) 地下に設置されたLHC(大型ハ…

ダ・ヴィンチ 受胎告知

レオナルド・ダ・ヴィンチの生涯 (5) 「悩んでいるときに難しいほうを選ぶ」…簡単なほうを選ぶと、見つけられるものが何もないのではないかという気がする…難しいほうを選んでいれば、自分が確実に成長できるし、たいていのことは次から楽になっていく。…

フンボルトペンギン 337番

人生もそう、自分達が歩むべき道を探して行かなければならない。日常生活の中で、平坦な道のりはない。上に上がっていくには何らかの危険を冒し、何かを犠牲にしなければならない。(イビチャ・オシム 男子サッカー元日本代表監督) フンボルトペンギン(こ…

「小銭入れ」の行方

生涯のある時期における時間の心理的な長さは、その人がその時まで生きてきた年数の長さの逆数に比例する。(ピエール・ジャネ;仏の心理学者、ジャネの法則) 役人の数はその仕事の大小に関係なく、常に一定の割合で増える。 会議に費やされる時間は、その…

負けるもんか!「成果主義」

頑張っていればいつか報われる。持ち続ければ夢は叶う。そんなのは幻想だ。 たいていの努力は報われない。たいていの正義は勝てやしない。たいてい夢は叶わない。 ・・・、けれど、それがどうした。スタートはそこからだ。 新しいことをやれば、必ずしくじる…

ダ・ヴィンチ ほつれ髪の女

人間よ、おまえには自分の種属がどう見えるのだろうか? 一体おまえはひとりで自惚れてるほど賢いものなのか? われわれのあらゆる認識は感覚にはじまる。(ダ・ヴィンチ) 先日、『レオナルド・ダ・ヴィンチ 美の理想』展(Bunkamuraザ・ミュージアム)に…

ヴェロッキオの代表作

レオナルド・ダ・ヴィンチの生涯 (4) 絵画における遠近法は3つの要素で構成される・・・第一は、距離に応じた立体の大きさの縮小で、第二は、その立体の色が薄くなるというもの。そして第三は、立体の形や輪郭の明確さが失われることである。(ダ・ヴィン…