遥かなる「知」平線

歴史、科学、芸術、文学、社会一般に関するブログです。

2012年ベルリン国立美術館展

人はみな生まれながらにして自由を求め、隷属を嫌う。
カエサルガリア戦記」)

自由を愛する者は、ごくわずかしかいない。

大半の者たちは、
公平な主人を求めているにすぎない。
(サルスティウス「歴史」)


先にベルリン国立美術館フェルメール真珠の首飾りの少女』をご紹介しましたが、8月に行ったこの展覧会から、いくつかの彫刻・絵画をご紹介致しましょう。この記事も大変遅れてしまいましたが、日本では12月2日まで九州国立博物館で開催されています。

monmocafe.hatenablog.com

ベルリン国立美術館群とは、ベルリンに、プロイセン帝国時代の文化財とコレクションの保護を目的に設立された15の美術館・博物館の総称で、「絵画館」「素描版画館」などがあります。

今回の展示の印象ですが、16世紀後半から末にかけて、ルネサンスからバロックへ移行する時期のいわゆる「マニエリスム」の影響を受けた技巧的表現の彫刻が多かったように思いました。

 

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アンドレア・デル・ヴェロッキオの工房 『コジモ・デ・メディチの肖像』 1464年頃 
ベルリン国立美術館彫刻コレクション

ダ・ヴィンチもいたヴェロッキオ工房で作成されたフィレンツェルネサンスを支えたコジモの肖像です。

 

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アルブレヒト・デューラー 『ヤ-コプ・ムッフェルの肖像』 1526年 ベルリン国立絵画館

ニュルンベルクの貴族階級の一人。市長も務め、デューラーと個人的に親交を結んでいた。

 

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ルーカス・クラーナハ(父)の工房 『マルティン・ルターの肖像』 1533年頃 ベルリン国立絵画館

ドイツの宗教改革者で知られるマルティン・ルター肖像画である。歴史の教科書で見たことのある人も多いと思います。

 

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ヤン・サンデルス・ファン・へメッセン 『金貨を量る若い女性』 1530年頃 ベルリン国立絵画館

金貨の目方を天秤で量ろうとしている風俗画に見えるが、むしろ肖像画としてみるのがふさわしいらしい。天秤には象徴的意味合いがあり、この女性の公正で「安定した」性格を示しているそうです。

 

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レンブラント派 『黄金の兜の男』 1650-1655年頃 ベルリン国立絵画館

17世紀絵画の黄金時代の絵画。この絵は長らくレンブラント本人の絵とされてきた有名な絵だが、1986年の調査でレンブラントの周辺の作とされたのですが、真筆問題はいまだ揺れているといいます。

 

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ヨハン・ゲオルク・ディル 『戴冠の聖母』1760-1770年頃 ベルリン国立美術館彫刻コレクション

ただ、静謐で深い祈りが伝わってくるようです。


15世紀以降のイタリア・ルネサンスの時代はまた、様々な素描技法の試行錯誤がなされた時代でもありました。絵画、彫像に先んじて画家たちの理念や想像力の試行錯誤の過程が内包されているところに最大の魅力があります。

ボッテチェルリミケランジェロの素描をあげておきましょう。

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サンドロ・ボッテチェルリ 『ダンテ「神曲」「煉獄篇」挿絵素描より:地上の楽園、ダンテの罪の告白、ヴェールを脱ぐベアトリーチェ(第31歌)』 1480-1495年頃 ベルリン国立素描版画館

 

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ミケランジェロ・ブオナローティ 『聖家族のための習作』 1503-1504年頃
ベルリン国立素描版画館