遥かなる「知」平線

歴史、科学、芸術、文学、社会一般に関するブログです。

本の紹介

数学の周辺

第一次世界大戦は化学者の戦争であり、第二次世界大戦は物理学者の戦争だった。・・・第三次大戦が起こるとすれば、それは数学者の戦争になるだろう・・・なぜなら、戦争の次期兵器となるであろう情報を支配するのは、数学者だからである。サイモン・シン『…

「紙」という技術

こうした物語にすっかり心を奪われた彼は、陽が落ちてから明け方まで、そしてまた夜明けから夕暮れまで、来る日も来る日も本に読みふけった。寝不足と本の読みすぎのおかげで脳味噌は干からび、ついに彼は正気をなくしてしまった。ミゲル・デ・セルバンテス…

塩野七生の「歴史」から

兵站(ロジスティクス)を重要視しない司令官は、戦場ではいかに勇猛果敢でも、勝利者には絶対になれない。・・戦闘では勝っても、戦争には勝てないのだ。 頭脳も筋肉と同じで、使わないでいると劣化してしまう。塩野七生『ギリシャ人の物語Ⅲ 新しき力』新潮…

「ジャック・ライアン」シリーズ

私は神に祈る、この館と、ここに今後住むすべての者に、最高の祝福を授け給えと。願わくは、誠実な賢者のみがこの屋根の下で国を治めんことを。アメリカ合衆国第二代大統領、ジョン・アダムズ(ホワイトハウス入居にあたって妻アビゲイルに書き送った1800.11…

佐藤賢一『ナポレオン①~③』集英社2019年

あなたは夢です。ときに皆の救いであり、あるいは皆の希望です。物語や神話でなく、実際に生きた人間のなかにあっては、あなたのような英雄は本当に少ないのです。 ナポレオンの遺骸がパリに帰還したとき、セント・ヘレナでナポレオンの秘書だったラス・カー…

S・レビツキー D・ジブラット『民主主義の死に方』

民主主義には明文化されたルール(憲法)があるし、審判(裁判所)もいる。しかし、それらがもっともうまく機能し、もっとも長く生き残るのは、明文化された憲法が独自の不文律によって強く支えられている国だ。 共通の基準から逸脱して行動する人に対処する…

劉慈欣 三体

科学全般の発展は、基礎科学の進歩によってもたらされる・・基礎科学の基盤は、物質の本質を探究することにある。もしこの分野でなんの発展もなければ、科学技術全般において、重大な発見や進歩がなされることはない。(劉慈欣『三体』早川書房2019.7) 「三…

THE DA VINCI CODE by Dan Brown

聖杯は古のロスリンの下で待ちその門を剣と杯が庇い護る匠の美しき芸術に囲まれて横たわりついに輝く空のもとに眠る(ダン・ブラウン『ダ・ヴィンチコード』角川書店) www.youtube.com YouTubeで、映画「ダ・ヴィンチコード」のテーマ曲を何曲か聴いていた…

内館牧子 終わった人

自分を仕事に合わせる。(なんだかんだ言わずに、その持ち場で、工夫し、考え、頑張る)(小野次郎;ミシュラン認定の三ツ星鮨職人) 「自分」を決めるのは他人だ。(装丁家 鈴木成一) 2年ほど前、大学時代の友人と旅行へ行った時のこと。温泉の旅館で、皆…

2016年 読書総括

人間が偏狭な考えや狂信を避けうるのは、多くの書物を虚心に読み、自由に考えることしかない。(辻邦生 『春の戴冠』 新潮社) わたしは世界中のすべての本を一冊ずつ欲しい!(サー・トマス・フィリップ) 今年は少し落ち着かない年でしたので、なかなかブ…

リサ・ランドール ダークマターと恐竜絶滅

この広い宇宙のなかに、私たちがこうして存在していることの驚異を思うと、私はいつも元気が湧いてくる。世界のつまらない争いにも、目先の心配事にも惑わされずに、科学が世界について教えてくれることの広大な範囲をしっかり視野に収めていこうと。・・・…

シェイクスピア没後400年(2)

よき友よ、イエスの名にかけて控えよここに埋葬されし遺骨を掘りだすことをこの墓石を動かさざる者に祝福あれ、わが骨を動かす者に呪いあれ (シェイクスピア墓碑銘) シェイクスピアのデビュー作とされるのは『ヘンリー六世』三部作です。後に続く『リチャ…

シェイクスピア没後400年(1)

When we are born,we cry that we are comeTo this great stage of fools.人間、生まれたときに泣くのはな、この阿保どもの舞台に引き出されたのが悲しいからだ。(『リア王』より) There are more things in heaven and earth,Horatio,Than are dreamt of …

P・ルメートル その女アレックス 死のドレスを花婿に

人は自分の人生から逃れることができない。逃げようとしても、それは必ず追いかけてくる。 「あなたらしい」・・・「考えたことを口にする勇気がない。口にしたことの意味を考える誠実さもない」(ピエール・ルメートル 『その女アレックス』より) まだ読ん…

マイクル・クライトン&リチャード・プレストン マイクロワールド

では、若い人間は、どうすれば自然界で経験を積むことができるのか?理想をいえば、多雨林でーあの広大で居心地が悪く、危険にあふれ、それでいて美しい環境で、しばし時を過ごすことだ。そうすれば、先入観などはたちまち木端微塵に吹き飛ばされてしまうだ…

2014年 読書総括

あなたがすることのほとんどは無意味であるが、それでもしなくてはならない。 そうしたことをするのは、世界を変えるためではなく、世界によって自分が変えられないようにするためである。(ガンジー) 2014年は、61冊(論理的には52冊)の本を読み…

佐藤優 人間の叡智

真理は常に匿名性の下に現れる。 日本が元気に立ち直るためには、・・・国民を統合する物語をつくりだすしかない・・・そして、目に見えないものに想いをはせる。それが叡智に近づく唯一の道だ(佐藤優『人間の叡智』文春新書 2012年7月) ロシアや中国…

鹿島圭介 警察庁長官を撃った男

それ隠れたるものの顕れぬはなく、秘めたるものの知られぬはなく、明かにならぬはなし(ルカ伝福音書) 1995年3月30日、国松警察庁長官狙撃事件が発生した。日本警察のトップが狙撃されるという前代未聞の事件だ。しかし、大規模な捜査にもかかわらず…

竹内洋 大衆の幻像

「教養とは、また節度であります(福田恆存)」声高に迫る品のない自己主張は、相手を動かすことはできない。自己満足にすぎないことが多い。教養ある人だけが節度をもった自己主張ができる。(竹内洋『大衆の幻像』中央公論新社) 毎朝、新聞のTV番組欄を見…

ジョエル・ディケール著 ハリー・クパート事件

人生は長い転落のようなものだ。だからいちばん大事なのは、負けることを恐れないことだ。 いいかマーカス、自由とは、そして自由への渇望とは、自分との闘いだ。・・・自由とは一瞬一瞬の勝負のことだが、それをわかっている人は少ない。 難しい選択を迫ら…

リサ・ランドール 宇宙の扉をノックする

どれほど小さな問題でも、それについての真実を見つけるほうが、どのような真実にも到達しないまま大問題について長々と論争を続けるよりも、よほど価値がある(ガリレオ) 世界は一直線の道ばかりではない・・パズルのある部分は埋められるかもしれないが、…

ローレンス・クラウス 宇宙が始まる前には何があったのか?

それが夢であれ悪夢であれ、われわれは自ら経験することを、ありにままに生きなければならない。・・・ものの見方を切り替えるだけで、それをゲームにすることはできない。(ジェイコブ・ブロノフスキー) われわれが「常識」という言葉で表すところのものは…

塩野七生 皇帝フリードリッヒ二世の生涯

すべては、あるがままに見たままに書くこと。なぜなら、この方針で一貫することによってのみ、書物から得た知識と経験してみて初めて納得がいった知識の統合という、今に至るまで誰一人試みなかった科学への道が開けてくると信じるからである。(フリードリ…

2013年 読書総括

(追記 2013.12.31)12月19日~31日までに、さらに2冊読みましたので、一覧表を再記載しました。2冊とも上・下巻の2巻本なので、「論理冊数」はそのままで、「物理冊数」のみカウントアップしています。 -------------------------------------…

若杉冽 原発ホワイトアウト

人間とはしばしば、見たくないと思っている現実を突きつけてくる人を、突きつけたというだけで憎むようになる。(塩野七海 『ローマ人の物語15』 新潮社) 人は誰でも、無条件によいものを選ぶのではなく、自分にとってよいものを選ぶものだ。(アリストテ…

百田尚樹 海賊と呼ばれた男 永遠のゼロ

たとえ九十九人の馬鹿がいても、正義を貫く男がひとりいれば、けっして間違った世の中にはならない。百田尚樹 『海賊とよばれた男 下』 (講談社) (特攻に)「志願せず」と書いた男たちは本当に立派だった・・・自分の生死を一切のしがらみなく、自分一人…

多田将 すごい実験 すごい宇宙講義

あの事業仕分けで「一番じゃないと駄目なんですか?」って話がありましたけど、僕が訊かれたら、即座にこう答えます。「絶対に駄目です!」 棚の下にいない者には、ぼた餅は手に入らない(棚の下に居る努力が必要なんです)(多田将『すごい実験』) 科学の…

イアン・トール 太平洋の試練(下)

敵、我にわざをなすことにつけて、役に立たざることをば敵にまかせ、役に立つほどのことをばおさへて、敵にさせぬようにするところ、兵法の専なり(宮本武蔵) 情報力をもって戦力差をあえてひきうける(ニミッツ、米太平洋艦隊司令長官) 今夜はいい月だな…

イアン・トール 太平洋の試練(上)

わたしは日本との動乱を予期してはいないが、そういう事態もおとずれるかもしれないし、もしそうなれば、それは突然やってくるだろう(1913年セオドア・ルーズベルトからフランクリンへの手紙) この広大な海域全体で日本は最強であり、われわれはあらゆ…

船橋洋一 カウントダウン・メルトダウン

危機に対応する政策が、後から見て完璧ということなどありえない。(ロバート・E・ルービン;クリントン、ブッシュ両政権下の財務長官) 戦いはマニュアルのない世界だった。仮説を立てる、アイデアを出す、その勝負だった。(船橋洋一 『カウントダウン・メルトダウン』か…