THE DA VINCI CODE by Dan Brown
聖杯は古のロスリンの下で待ち
その門を剣と杯が庇い護る
匠の美しき芸術に囲まれて横たわり
ついに輝く空のもとに眠る
(ダン・ブラウン『ダ・ヴィンチコード』角川書店)
YouTubeで、映画「ダ・ヴィンチコード」のテーマ曲を何曲か聴いていたら、また本が読みたくなった。捨ててはいないからどこかにあったはず、と大型の6つの書庫を探し回ったがどうしても見つからず、つい再度買ってしまった。内容は知っているので、どうせならと、写真やイラストが多数載っている『THE DA VINCI CODE SPECIAL ILLUSTRATED EDITION』999部の限定版の一冊を買った。「特装革製 ヴィジュアル愛蔵版」とあった。
ここに登場するダ・ヴィンチの作品は、被害者自らがその身体を使って残したメッセージとなる「ウィトルウィウス的人体図」、「モナリザ」、「岩窟の聖母」(ルーブル版)、「最後の晩餐」、そして2~3枚ほどのノートに記された工作機械スケッチだ。
サンドロ・ボッティチェリを引き継いで1510年からダ・ヴィンチがシオン修道会の総長となったということや、ダ・ヴィンチは聖杯を「最後の晩餐」に描きこんだというのは、いささか問題だと思う(じゃあヨハネはどこ行った?)のだが、それをさておいてもミステリーの素材としては魅力に溢れている。(注)
ダ・ヴィンチ『最後の晩餐』
殺人事件を発端にして、現場に残された暗号を解いてゆくのだが、解けば次の暗号が・・と連鎖していく。過去にコンスタンティヌス帝やヴァチカンが葬ったキリスト教の歴史、そして聖杯とは何か、フランス警察に追われながら主人公とともに残された暗号の謎を解こうとするソフィーの隠された過去、そして次第に明らかになってゆくシオン修道会の姿と役割、テンプル騎士団や死海文書など歴史好きにはたまらないテーマがこの一冊に凝縮され、壮大な物語になっている。
ダ・ヴィンチ以外の様々な歴史的図像、絵画や建造物(ルーブル美術館、テンプル教会、ロスリン礼拝堂など)が豊富に出て来るので、西洋美術、聖書になじみの薄い人には、いささか抵抗があるかもしれないが、パリ、ロンドンに旅行で行くことがあるなら、一読して行けば歴史に対する興味や楽しみも増すことだろう。
長い歴史の中に隠された血脈、パリの古の「ROSE LINE」を辿って行ったその場所に永遠の眠りについているもの。ひょっとしたら、あなたにもそれを感じられる旅になるかも知れない。
それでは別バージョン Hans Zimmer The Da Vinci Code を載せておきます。
(注)1492年サボナローラが現れて以降ボッティチェリの作風は変わり、1501年には絵を描かなくなり、1510年に極貧のうちに死んだ。ダ・ヴィンチは宗教画を描く以外は宗教とは関わらなかったし、「最後の晩餐」(ミラノ)の完成は1498年、フランスへ行くのは1516年冬。なので、サンドロもダ・ヴィンチもシオン修道会の総長というのは非常に考えにくい。