遥かなる「知」平線

歴史、科学、芸術、文学、社会一般に関するブログです。

自然科学

ちょっとした頭の体操

「オイラーは、人が呼吸するように、またワシが風に身を任せるように、はた目には何の苦労もなく計算をした」(アラゴ) アルゴリストは・・・生まれながらのものであって、つくられるものではないE・T・ベル『数学をつくった人びとⅠ、Ⅱ』早川文庫2003年9月 …

オイラーの公式へ(2)ダランベールの判定法

科学技術がますます力を増している現代世界において、数学はかつてないほどのスケールで力と富を生み、進歩の原動力となりつつある。そうであってみれば、数学という新たな言語を自由に操れる者が、進歩の最前線に立つことになるだろう。エドワード・フレン…

オイラーの公式へ(1)ε-N論法

脳みそは筋肉である。訓練しなければ、筋肉は衰える。モンモ・カフェオーレ卿 驚くべきは、数学はその本性により、民主主義的だということだ。・・数学の資源と数式は、すべての人に同じように理解され、等しくみんなのものになる。数学的知識は誰にも独占で…

eの計算

世界は粥で造られてはいない。君らは怠けてはいられない、堅いものは噛まねばならぬ。喉がつまるか消化するか、二つに一つだ。(ゲーテ) 「わかる」とは、少なくともそれに関して二つ以上の説明の方法を持つこと。それが出来たとき、はじめて私は「本当にわ…

πの計算 

高く登りたければ、自らの脚を用いよ!高い所へは、他人によって運ばれてはならない、他人の背中や頭に乗ってはならぬ!(ニーチェ) 2019年3月14日、グーグルは円周率πの小数点以下約31兆4000億桁を計算したと発表した。日本出身のグーグル技術者である岩尾…

ピタゴラスの定理を使わないで

科学者を目指す若者に、中等教育で最も励んで欲しいのは数学、特に平面幾何学である。(福井謙一;1981年ノーベル化学賞) 今、じゃまされずに使える時間は少ない。・・・サービス過剰だ。ここでは子供たちに教える必要はない。静かな環境と、材料を与えれば…

小学生の算数問題

一粒の砂に世界を見、一輪の野の花に天国を見るつかみたまえ、君の手のひらに無限を、一刻の時に永遠を(ウィリアム・ブレイク) 精密でエレガントな雰囲気を感じさせる厳密な数学的分析の美しさに目を奪われて、プロセス全体を左右する前提の欠陥を見過ごし…

2014年ノーベル物理学賞

私は伝えたい。夕方になるとカエルが鳴くような日本の田舎で、ため息をついて空を見上げている君も、目標を世界水準にせよ、と。(中村修二;カルフォルニア大学サンタバーバラ校教授) 2014年のノーベル物理学賞は、青色発光ダイオード(LED)を開発した赤崎勇教授(名…

ボイジャーの遥かなる旅

おまえはだれか。おまえは、どこから来たのか。おまえのようなものを、これまで見たことがない。創造主ラベンは人間を見てそう言った。そして、この見なれない新しい生物が、自分自身にあまりによく似ているのでびっくりした(エスキモーの創造神話) 先日、…

イプシロンの0.07秒

(追記)2013.09.162013年9月14日、14時、イプシロン打ち上げが成功し、約1時間後、惑星観測衛星の切り離しに成功した。 -------------------------------------------------------------------------------------------------------------…

アインシュタインまでの距離

未知こそ自由だった。誤りすら可能性を作り出し、同じ誤りの中で堂々巡りをせぬ限り、一つの思考が、必ず、次の思考の道しるべとなる。 星は答えない。決して拒みもしない。それは天地の始まりから宙(そら)にあって、ただ何者かによって解かれるのを待ち続…

ダークマター(暗黒物質)の証拠

ひらめきを生む前提となるのは、情報を集めたり、試行錯誤を繰り返しながら、徹底的に考えて、考えて、考え抜くこと。 経営者は暇でなければならない。スケジュールには空白の時間がなければならない。(飯塚哲也;ベンチャー経営者)(注)どんなにいいアイ…

小惑星衝突

絶望する間に、行動あるのみ(福井晴敏 『Twelve Y.O』 講談社) 君も変っていく。ぼくも変っていく。お互い、自分がどこへ向かっていくのかは未だ分からない 誰も飢えていないところへ流れるニュースに、痛みは伴わない。旗を振るような人類共通の関心事な…

ガリレオの指

神の摂理は、我々の前に開かれている最も巨大な書物、即ち、大自然のなかに数学の言葉で書かれている。 私が千倍にも広げたこの宇宙が、今は私の内面の小宇宙にまで縮まってしまった。(ガリレオ・ガリレイ) 私に判決を下したあなたがたのほうが、判決を受…

太陽の質量

太陽は動かない(レオナルド・ダ・ヴィンチ 1452-1519年) (注)コペルニクス(1473-1543年)の太陽中心(地動)説を述べた『天球の回転について』が刊行されたのは1543年3月、ダ・ヴィンチが死んで24年後のことである。 私は天を測った。そして、今、影を…

二番になったスーパーコンピューター

一つの国が滅びの道を突っ走りはじめるときというのは、恐らくこうなのだ。… たとえようもなくひどい知力の衰弱が社会をおおっているため、ほとんどの人が、ちょっと考えればすぐわかりそうなものがわからず、ちょっと目をこらせばみえるはずのものが見えな…

「ABC予想」の証明

人生におけるもっとも幸福なことの一つは、 極め得るものを極め、 極め得ないものを静かに尊敬するにある。(ゲーテ)(注)しかし、ゲーテ自身は、83歳の生涯で2週間しか幸福な時はなかったと言う。 一か月ほど前の新聞に、京大の望月教授が「ABC予想」を証…

iPS細胞 祝2012年ノーベル生理学・医学賞

予想以上に生物の体はすごい・・・私たちの体には、非常に高い柔軟性がそなわっている 人体にも実はもっとかくれた能力があるのではないか・・・人では手足が切断されると生えてこないが、それは今できないだけで、50年後、100年後、200年後もほんと…

ヒッグス粒子の発見

誰がこんなものを”注文”したんだ!(注)予測もしていない素粒子(ミュー粒子)が実験で見つかった時の物理学者たちの反応 生きているうちにこの結果を見られるとは、信じられない。ピーター・ヒッグス(英;物理学者 83歳) 地下に設置されたLHC(大型ハ…

ダークマター(暗黒物質)

私は、砂漠で小石や貝を拾って遊んでいる子供のようなものだった。真理の大海はいまだ発見されることなく目の前に広がっている。(ニュートン) 本当の論理というものは、しばしば直感に近くなる。膨大な、サイエンスの探求がないところに本当の直感も働かな…

ハイゼンベルクの不確定性原理

文科系だったので量子力学の基礎すら学んだわけではありません。だから、こうした記事を書く資格もないと思うのですが、「隠れ」理科系としては、なんとも興味をそそる記事が先月出ていたので、1月22日の読売新聞からご紹介しましょう。 物理学には「原理…

思い出深き「帰納法」

いかなる無矛盾な公理的体系の中にも、真か偽か決定できない命題が存在する(1931年、数学者ゲーデルはこの『不完全性定理』を証明した) ダ・ヴィンチ ルカ・パチョ-リ著『神聖比例論』のための挿絵 人には忘れられないことがある。感動したこと、苦労…

アンティキテラの歯車

ギリシャ人がその知識をさらに進歩させていたら、産業革命は千年以上早く起きていただろう。(米国・SF作家 アーサー・C・クラーク) この機械に類した物は、ほかのどこにも残っていない。私たちが理解していたヘレニズム期の科学技術の水準からすれば、…

質量の起源 ヒッグス粒子の発見

LHCでの実験は、ほぼ確実に、標準モデルの先の物理についての手掛かりとなる清新な性質をもった粒子を発見するだろう。 ・・・ひょっとしたらカルツァ‐クライン粒子、すなわち余剰次元を横断する粒子が現れてくる可能性もある。リサ・ランドール 『Warped Pa…

ノーベル物理学賞 加速膨張する宇宙

自然は、経験の中にいまだかつて存在したことのない無限の理法に満ちている。 運動は、あらゆる生命の源である。(ダ・ヴィンチ) 2011年のノーベル物理学賞は、宇宙が加速して膨張していることを発見した3人に贈られることになった。 ソール・パールマ…

赤色超巨星 ベデルギウスの近づく最後

この季節、まだ冬ほど星空は美しく輝かない。古来より、人間は星空を見上げてきた。 星空に、神話を写し込み、物語を語った。そして時に、常ならぬ流星雨や彗星、超新星の出現におののいた。 しかし一方で、星々を観察し、地球が宇宙の中心だというドグマか…

巨大地震のメカニズム

今日は生きた。でも明日になれば何が起こるか分からない。そんな場所では人々は、問題解決のアイデアを持たなければならなくなる。(イビチャ・オシム 男子サッカー元日本代表監督) 方法が正しく、また、現状が正確に把握されていれば、予測は必ず当たる。(…

2008年 4つのノーベル賞

10年先のことを知りたいなら、南部の意見を聞け。 但し、それを理解するのには10年の月日がかかる。(米国のある物理学者) 自由以外に、思考の目的はない。人間が思考によって獲得する価値のあるものは、それ以外にない。 (森博嗣 『笑わない数学者』 …

光の速度はどうやって測ったか

光は、1秒間に地球を7周半まわります。それではどうのようにして光の速さを測ったのでしょうか。 アルマン・フィゾー(仏1819-1896)が、1849年に行った実験をご紹介しましょう。 2-a光源からの光を回転する歯車に導き、歯車の隙間を通した…

地球半径の測定

人間は、大そうな議論をするが、その大部分が空虚でまやかしである。・・・偉大な嘘より、ささやかな正確さの方がましである。(ダ・ヴィンチ) 前に地球の大きさとして、古代ギリシャ人のエラトステネスが地球の円周を測った話を書きました。今日は、地球の…