遥かなる「知」平線

歴史、科学、芸術、文学、社会一般に関するブログです。

ダークマター(暗黒物質)の証拠

ひらめきを生む前提となるのは、
情報を集めたり、試行錯誤を繰り返しながら、
徹底的に考えて、考えて、考え抜くこと。

経営者は暇でなければならない。
スケジュールには空白の時間がなければならない。
(飯塚哲也;ベンチャー経営者)
(注)どんなにいいアイディアも、それをキャッチする準備が整っている必要がある。
そのために脳に「余裕」が必要だ。「暇なときほど脳は自由に発想の翼を羽ばたかせる」。「とことん考えてから寝る」。眠りに入ったあとも脳は引続き問題をかんがえようとする。

 

4月4日の新聞朝刊に、暗黒物質についての記事が出ていた。
宇宙の物質は、その23%が暗黒物質、73%がダークエネルギーで、我々が知る物質は約4%に過ぎない。その暗黒物質についての記事だ。

一年ほどまえに「ダークマタ―(暗黒物質」という記事を書いたが、国際研究チームが2011年から国際宇宙ステーションに搭載した装置(AMS)で観測実験をしており、「陽電子」のエネルギー分布などから、「陽電子が飛来する方向に偏りがなく」宇宙の全方向から来ていることがわかった。
暗黒物質同士の衝突や崩壊によって生じた可能性があるという。

f:id:monmocafe:20190524211437j:plain


そもそもダークマタ―であるための必要条件というものがある。
①どんな波長の電磁波も出さない。(従って観測できない)
②どんな物質ともほとんどぶつからずにすり抜ける。
 天の川銀河でのダークマタ―の速度は秒速200キロメートル。
③宇宙初期にほぼ速度ゼロの冷たい物質。
 冷たいダークマタ―の集合体が銀河の種となった。
④ダークマタ―の総質量は見える物質の約5倍。
上記4つの条件を満たすものがダークマタ―の候補になりうるとされている。

ダークマターの候補】
それではダークマタ―の候補にはどんなものが考えられているのだろう。
ニュートラリーノ
ニュートラリーノというまだ発見されていない「超対称性粒子」と呼ばれる、理論上存在が予言されている素粒子グループの一員だ。

超対称性粒子とは、電子などのあらゆる素粒子に対して、それぞれペアを組む素粒子の総称で、光子とペアを組む「フォティー」、弱い力を伝える素粒子の一つ(Z粒子)とペアを組む「ジー」、他の粒子に質量を与えるヒッグス粒子とペアを組む「ヒグシーノ」がニュートラリーノだ。

これらは大変重い素粒子と考えられており、質量は陽子の約1000倍ともいわれる。1000立方メートル(10m×10m×10m)の空間あたり1個程度の低い密度で宇宙全体に存在している。

アクシオン
これも未発見で、理論上存在が予言されている素粒子だ。
強い磁場の影響を受けて光子にかわるという性質をもつ。通常の宇宙環境ではアクシオンが光子にかわることはほとんどないと考えられている。

また質量が非常に軽いにもかかわらず、誕生直後からその速度はほぼゼロだったと考えられている。アクシオン一個の質量は、陽子の100兆分の1程度しかなく、これがダークマタ―だとしたら1000立方メートルあたり1兆個の10万倍の密度で存在することになる。

【ダークマタ―の検出】
ニュートラリーノの検出
ダークマタ―そのものは捕獲できないので、ダークマタ―が他の物質とごくまれにおこす衝突の痕跡を見つけてダークマタ―の証拠をつかまえようというものだ。

岐阜県神岡鉱山跡の地下1キロメートルの地点に作られた東大宇宙線研究所のダークマタ―検出装置(XMASS)では、約マイナス100度Cまで冷やしたキセノン液(1トン)に、飛んできたダークマタ―が衝突した際、キセノンの原子核にぶつかって発生する光を、650本の光電子倍増管で検出しようというものである。

②ビッグバンを再現してダークマタ―を生成する試み
ダークマタ―の最有力候補のニュートラリーノを作る試みが、スイス・ジュネーブ郊外にあるLHC(大型ハドロン衝突型加速器で行われようとしている。ヒッグス粒子を発見した施設でもある。
一周が27キロメートルの円形の施設で、ほぼ光速にまで加速された陽子どうしを正面衝突させて膨大なエネルギーを使って発生するニュートラリーノなどの素粒子を観測しようというものだ。

③ダークマタ―どうしの衝突の痕跡をとらえる観測実験
ダークマタ―粒子どうしが偶然正面衝突をすると両方とも消滅すると考えられており(対消滅)その際に陽子や電子、それらの反物質電荷の正負が逆のパートナー)、ニュートリノγ線が放出されると考えられており、これらをとらえようとする実験である。
今回新聞報道にあったのはこれに該当する。

アクシオンの検出
アメリカ、ローレンスリバモア国立研究所のカール・ビッバーが、1989年、宇宙の星間の磁場より1000億倍ほど強い磁石を使って光子を観測しようとADMX(アクシオン暗黒物質実験)を開始したが、いまだ発見の報告はない。
現在、各国の研究機関がダークマターの検出にしのぎを削っている。
続報が待たれる。

【参考記事】

monmocafe.hatenablog.com

【参考】
2013年4月4日 『読売新聞』朝刊
『Newton』2012年9月号