2012年 読書総括
『死にもの狂いの剣士と、満足した豚からも
等距離に離れていたところで、
そんなのはただの凡庸じゃねえか』
(作者不詳)
どこか遠くの彼方には難破している人たちがいるんだ、
こんなに多くの難破を前に腕をこまねいてはいられない、
我慢しろ、今、ぼくらのほうから駆けつけてやるから!
人間であるということは、
自分には関係がないと思われるような不幸な出来事に
忸怩たることだ。
(サン・テグジュペリ)
『わたしの言う通りにやれ。わたしのやる通りにではなく』
(補足)言うは易く、行うは難し。私はできなかったから、あなたはやってね。
『ガラスの家に住む者は、石を投げてはいけない』
(補足)弱みを持っている人間は、相手を批判してはいけない。
『卵を割らなければ、オムレツを作ることはできない』
(補足)無傷で何かを得ることはできない。
以上 伊坂幸太郎 『陽気なギャングの日常と襲撃』 (祥伝社)から
『まさか、楽するために生まれてきたんじゃあるまいな』
(注)小説中、ある寺の看板にそう書かれていた、という。実際にそんな寺があるのかも。
(伊坂幸太郎 『重力ピエロ』 新潮文庫)
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ちょっと早いのですが、2012年の読書総括です。
中学生の頃にシャーロック・ホームズ、エラリー・クィーンを読み始めて以来、読書が日常的なものとなって現在に至っています。おかげで、家は書籍で一杯になってしまい、地震で本に埋もれた人のニュースは他人ごとではないのです。
これまで何回か本を整理してきたのですが、今年は夏に535冊ほど処分しました。その内古書店に売れたのは473冊でした。
記録をつけ始めたのは2006年からですが、一年53週なので、一週間一冊を基準に読むようにしています。それでも、その年によってかなりの差ができてしまいます。
2012年は特に、読書ができませんでした。言い訳のようですが、いろいろバタバタしていたので、その影響が読書量に現れてしまった恰好です。29冊(分冊ものもありますので実質25冊)しか読めませんでした。私の読書人生で最も少なかったと思います。
当然のことながら、読んだ本より、買った本が多く、かくして大幅に積読状態となってしまいました。なかなか追いつけません。
ミステリーから始まった読書歴も、ジャンルを問わずだったのが、読書傾向は随分変わってきました。最近では歴史や自然科学系がほとんどで、所謂エンターテイメント小説はあまり読まなくなってしまいました。
ですが、ある日突然ミステリーが読みたくなり、時としてスティーグ・ラーソンの『ミレニアム』(早川書房 全6冊)のような小説に出会うと、もう読書以外どうでもよくなります。
今年読んだ本の中では、塩野七生『十字軍物語3』(新潮社)、佐藤賢一『フランス革命7、8』(講談社)がお薦めでしょうか。『十字軍物語』はヴェネツィア、ローマ、ローマ帝国後の地中海世界、と書いてきた著者の最新の歴史物です。
「戦争と平和」について重い問いかけが残りました。
歴史物では、現在の関心がルネサンスにあるので、少し前の本になりますが、若桑みどり『フィレンツェ』(文藝春秋 1994年)、田中耕治『メディチ家の人々』(河出文庫 1984年)が読み応えがあります。
が、これはその時代に興味のある方でないとちょっと苦しいかも知れません。最近出版されたハロルド・アクトン『メディチ家の黄昏』(白水社)はこれからです。
フィレンツェの歴史は、メディチの歴史。輝かしき大ロレンツォの前期ルネサンス、そして血塗られた感のある後期ルネサンスのフィレンツェ。
機会があればご紹介しましょう。
近代以降の文明の発展は西欧が中心でした。その西欧を理解するうえで、やはり「キリスト教」は欠かせません。本質的に多神教の日本人には、なかなか理解できないものがありますが、橋爪大三郎・大澤真幸『ふしぎなキリスト教』(講談社現代新書)は理解の手助けになるでしょう。
自然科学系では、ブライアン・クレッグ『重力はなぜ生れたのか』(SoftBank Creative)が、これまでの重力探究の歴史を語ってくれます。素粒子や宇宙に興味のある方はどうぞ。
以下、2010年からの3年分の読書リストを載せておきましょう。
(注)表中の項目説明
・「物理冊数」;分冊も1冊としてカウント。
・「論理冊数」;物理的に複数冊でも論理的に1冊を構成する本は1冊とカウント。但し、塩野七生『十字軍物語』や佐藤賢一『フランス革命』など長編ものは巻単位「論理冊数(=物理冊数)」でカウント。
・「分類」;便宜上の適当な分類。
・「評価」;もちろん主観的評価。上から「☆」⇒「◎」⇒「○」⇒「 」⇒「×」の5段階。