遥かなる「知」平線

歴史、科学、芸術、文学、社会一般に関するブログです。

フェルメール 真珠の耳飾りの少女

いつのまにか 青い空がのぞいてる
思いつめた黒い雲は 逃げてゆく
君はどこで生まれたの 育ってきたの
君は静かに 音もたてずに大人になった

白い膚が 光に触れ まぶしそう
髪の色は 青い空に浮きたって
燃える夏の太陽は そこまできてる
君は季節が変るみたいに 大人になった

いつのまにか 「愛」を使うことを知り
知らず知らず 「恋」と遊ぶ人になる
だけど春の短さを 誰も知らない
君の笑顔は悲しいくらい 大人になった

いつのまにか少女は 井上陽水 - YouTube

 

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ヨハネス・フェルメール 『真珠の耳飾りの少女』 マウリッツハイス美術館

 

君の絵だけが展示されている、薄暗い広いホールの遠く
大きな強化ガラスの向こう側に、
君は柔らかい灯に照らされて、小さく浮きあがって見えた

僕と君の間には、
たくさんの人々の、黒い群れがうごめいていて
君を最前列で観ようと、押し合っていた

およそ20分もして、ようやく君に辿りついたとき
語りかける言葉もなく、そのまま列から押し出されてしまった

初めて会ったはずなのに
君は変わらずに
少し寂しそうな視線を投げかけていた

きっと、変ってしまったのは僕のほうだった
記憶は時間を変容させて
君と僕の、昔と今を比べてしまっていた

君は、あの時と変らぬ戸惑いと
何かを訴える眼差しを残して
僕の前を通り過ぎた

君が振り向いてしまったために
ずっと昔にその絵の中に閉じ込められてしまった永遠を
僕は忘れることはないだろう

2012年6月30日ー9月17日
マウリッツハイス美術館展 (東京都美術館