フェルメール ディアナとニンフたち
苦しみつつなお働け。
安住を求めるな。
この世は巡礼である。
(黒木ひとみさん20歳の時の言葉 宝塚月組)
艱難は忍耐を生み出し、
忍耐は練達を生み出し、
さらに練達は希望を生む
(野阿 梓 『黄昏郷』 早川書房)
9月17日まで上野の東京都美術館で開催されていた『マウリッツハイス美術館展』の中から、先に『真珠の耳飾りの少女』をご紹介しました。
実はこの美術館のフェルメールの絵はもう一点展示されていました。
フェルメールが、物語絵の画家としてスタートした頃の初期の作品とされる、『ディアナとニンフたち』という絵です。
フェルメール 『ディアナとニンフたち』 1653~54 マウリッツハイス美術館蔵
実はこの絵、最も古い来歴は1866年に遡り、その10年後のマウリッツハイス美術館収蔵を経て、1885年に至るまで、一貫してレンブラントの弟子の一人ニコラス・マースの作品とされていたのです。
1885年、その署名『Maes』に疑問が生じ、デルフトのフェルメールに帰属された後、
1892年マースの署名の下から「JVMeer」の署名が現れ、館長ブレディウスがユトレヒトのフェルメールではないかと判断したのです。
1901年に、『マルタとマリアの家のキリスト』を見たブレディウスはその類似性からデルフトのフェルメール作と判断し、以来一部例外を除いてそれに疑問が提示されることなく現在に至っているのです。
小林頼子さんは、ブレディウスがこの絵をフェルメール作だという根拠とした色調、筆遣い、モデリングすべてが『マルタとマリアの家のキリスト』の作者とは全く別の人物によって描かれたものだとして、フェルメールの真作からは外している。
実際に見た感じは、意外に大きな絵で色調も柔らかで堂々とした絵だという感想を持ちましたが、それがフェルメールの真作かどうか素人のモンモにはわかりません。
ただニンフの一人は後ろ向きだし、他の4人の顔の表情も、うつむいて暗くぼやけているような気がします。
参考までに『マルタとマリアの家のキリスト』の絵を載せておきますので、どう思うか比較してみて下さい。
フェルメール 『マルタとマリアの家のキリスト』 1654~55年
エディンバラ、スコットランド・ナショナル・ギャラリー蔵