遥かなる「知」平線

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ダ・ヴィンチの飛行機械

レオナルド・ダ・ヴィンチの生涯 (14)

空を飛ぶ喜びを一度でも味わったものは、
地上に戻っても、
眼差しを空に向けたままにしてしまう。
かつて自分がいたあの空に、
いずれは戻りたいと願うのだ。

人間が空を飛ぶことは絶対に可能だ。
レオナルド・ダ・ヴィンチ


ダ・ヴィンチの比較的初期に書かれたと考えられている『パリ手稿』に、飛行機械に関する詳細図がある。鳥の飛行を観察し、羽の動きかた、重心の移動を考えることから、何らかの機械があれば人間も空を飛べるのではないかと考えたのだろう。

 

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(翼の積載量測定に関するスケッチとノート 『パリ手稿』1487年~90年 パリ、フランス学士院)

「実験したいなら、網で補強した紙と葦の骨組みで、幅と長さが少なくとも20ブラッチャの翼をつくり、重さ200リッブラの厚板に固定する。そして図のように、すばやく力をかけよ」
(20ブラッチャ;12メートル、200リッブラ;60~70kg)

鳥の飛行原理を応用したオーニトプター(注)の考察がある。
(注)
「オーニト」;ギリシャ語「オーニス=鳥」に由来
「プター」;ギリシャ語「プテロン=翼」に由来

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(飛行機械のスケッチとノート 『パリ手稿』1487年~90年 パリ、フランス学士院)
「aは翼を捻じり、bは梃子の作用によって翼を回転させ、cは翼を下げ、dは翼を下から上へ持ち上げる。操縦者は両足をfdにのせ、足fは翼を下げ、足dはそれを上げる。」(図中の記号は不鮮明)

 

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(飛行機械のスケッチとノート 『パリ手稿』1487年~90年 パリ、フランス学士院)
「これは、1対の翼で作ることができ、また2対にすることもできる。1対の場合には、両腕を使って巻き上げ機で翼を上げ、勢いのある2回の蹴りでそれを下げることになるだろう。」

 

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(飛行機械のスケッチとノート 『パリ手稿』1487年~90年 パリ、フランス学士院)
「昇降用の梯子は高さ12ブラッチャとし、両翼を広げたときの幅は40ブラッチャ、それを上げたときの高さは8ブラッチャ、船首から船尾までの長さは20ブラッチャで、船体の高さは5ブラッチャとし、骨組み以外はすべて籐と帆布で作ること。」

 

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(ヘリコプターのスケッチとメモ 『パリ手稿』1487年~90年 パリ、フランス学士院)
「螺旋のいちばん外側にはロープのように太い針金を用い、円から中心までを8ブラッチャとせよ」

ダ・ヴィンチは、これらの飛行機械の実験をしたようだが、成功はしなかった。具体的な仕様を指示し実験を繰り返したのだろう。「成果が得られないならば、それ以上無駄な時間を費やしてはならない」とも書いている。
揚力を生み出す原理を発見したわけでもないが、空気を水と同様にみたて流体力学の先駆けをなした。

1903年12月17日、ライト兄弟ガソリンエンジンで59秒間300メートルの飛行に成功した。
1939年、アイヴァン・シコルスキーが、回転翼の飛行装置(ヘリコプター)を作った。
1977年、ポール・マクレディが人力飛行機ゴッサマー・コンドル号で飛行を成功させた。

 

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(ゴッサマー・コンドル号;操縦者はブライアン・アレン)

2006年7月8日、ジェームズ・ド・ロリエ設計で、動力で動く「羽ばたき」飛行機がつくられ、飛行に成功した。1秒間に約1.3回の羽ばたきを実現させたのだという。
ダ・ヴィンチ死してのち400年、ここに彼の夢は成ったのだ。

【出典】
レオナルド・ダ・ヴィンチ 天才の素描と手稿』西村書店(2012年8月)

(つづく)