それぞれの遠野物語(NSPより)
遠くに望んだ山並みに
白く靄がかかっている
街はくすんだ灰色に佇み、
雪雲を吹き払った空だけが蒼い
きっと雪国の山々は、
重く白い世界に閉ざされているだろう
冷たい外気を断ったガラス戸のこちら側だけが
優しい陽ざしに暖かい
ルノアール 『イレ-ヌ・C・ダンヴェール嬢』 (E.G.ビューレ・コレクション)
夢は成ったか、志は遂げたか
景色を彩る季節のように
人々の時間もまた紆余曲折に出会う
そして、時間の終わりに人は何を想うのだろう
叶わなかった夢か、
それとも精一杯だったことの充足か
春に芽吹く命のように、子が生まれ、育ち
その子らがまた新しい命を育み、
私たちがずっと、繰り返してきた営みを
この惑星と共に続けていきたいと願う
人を愛し、力を尽くし、苦難を乗り越え
そしてだからこそ、ささやかな喜びに微笑みながら
果たせなかった夢を、未来に託すのだ
戦争、貧困、病苦、温暖化・・・
きっとこの先も続く
それでも人は、小さな幸せのために歩き続けるだろう
君の心にもあるだろうそれぞれの「遠野物語」を抱きしめて