遥かなる「知」平線

歴史、科学、芸術、文学、社会一般に関するブログです。

映画 ターミネーター ニュー・フェイト

I won't be back.
私は戻らないだろう。
(T-800;アーノルド・シュワルツェネッガー

スカイネットを生み出したサイバーダイン社の技術者は死に、サラジョンを抹殺しようと送り込まれたターミネータT-1000溶鉱炉の中に溶解し、世界は救われた。(映画『T2』1991年)

それから多くの年月が過ぎた。

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REV-9(ガブリエル・ルナ)

メキシコにある自動車工場の平凡な女性従業員ダニー
同じ工場に勤める弟と病気の父親との3人暮らし。
早く起きなさいと弟に声をかけ、父親に朝食を用意して「病院に行くんだよ」と言って弟と工場へ出勤する。

昨日もそうやって過ぎたし、今日も同じように過ぎる。
そして明日も同じような一日が過ぎていく、とダニーは思っていただろう。

その街に突然ロボットとサイボーグが現れ、ダニーの目の前ですさまじい戦闘が始まるまでは。

自分を襲ってくるロボット(REV-9)に、ダニーを守ろうとするサイボーグ(グレース)。
「なに?一体これはなんなの?」

逃げなければ死ぬ、とグレースに伴われて弟と逃げる。
なぜ自分が襲われ逃げなければならないのか、事態を飲み込めぬまま高速道路上で弟が死に、絶体絶命の窮地に陥るダニーとグレース。

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ダニー(ナタリア・レイエス)とグレース(マッケンジー・デイヴィス)

そして現れたサラ・コナーによって、二人は窮地を脱する。
なぜ、そこに戦闘服のサラがいるのか。

サラからダニーを守る理由を聞かれるが、グレースは答えない。
サラは、きっと私の時と同じだ、と思う。
奴らの狙いは、将来人類の指導者を生むことになるダニーの子宮だと。

そして映画は、一つ一つの謎を明らかにしていく。

ジョン・コナーはどうしたのか。
サラが年老いてもなお戦い続けるのは何故か。
ダニーが襲われた現場にサラを導いたのは誰か。
スカイネットがREV-9を送り込んだのではないなら、その送り主は誰なのか。
なぜT-800は復活したのか。
ダニーが狙われた本当の理由。
そして未来で、ダニーとグレースには何があったのか。

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サラ・コナー(リンダ・ハミルトン

ジェームズ・キャメロンは『T2』の続編としてこの『ニュー・フェイト』を作った。

平凡で普通の人間が、突然の困難に、しかも人類の未来を左右する事態に直面したらどう立ち向かうのか。
辛くても目の前の事態を受け入れて生きるしかない。
そしてこの『ターミネーター』も、『T2』と同様に、私たち人間の勇気、自己犠牲、失意と愛、そして未来への警告と希望を物語る。

私たちもしかり。
どんなに世界が変わっても、そこに居る者が、困難な人生を受け入れて、やるべきことをやるしかない。
ターミネーター』は、いつもそう私たちに教えてくれる。

この映画に更なる続編があっても、おそらく、もうT-800(アーノルド・シュワルツェネッガー)はでてこないだろう。そのためにキャメロンは、T-800に”I won't be back.(私は戻らないだろう)"とそう言わせたのだと思う。

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T-800(アーノルド・シュワルツェネッガー

サラとT-800の物語は、ひとまず区切りがついたのではないかと思う。
1984年の『ターミネータ』、1991年の『T2』。そして今回の『ニュー・フェイト』で3部作は完結したと考えていいだろう。(注)

ならば、これを見逃す手はない。

(注)他の作品はキャメロンは関わっていないので枝編という位置づけになるのではないだろうか。