遥かなる「知」平線

歴史、科学、芸術、文学、社会一般に関するブログです。

映画 ターミネーター ジェネシス

古いが、ポンコツではない。
(『ターミネーター ジェニシス』T-800:シュワルツェネッガー


1984年に公開された映画『ターミネータ』を見た人は、アーノルド・シュワルツェネッガー演じるターミネータ(T-800)の迫力に新鮮な驚きを感じたのではないでしょうか。

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ターミネーター(T-800)(シュワルツェネッガー

未来の人類と機械軍(スカイネット)との戦争で、機械軍は人類との戦争に勝てないと知るや人類のリーダーであるジョン・コナーの母サラ・コナーを抹殺するために過去に向けてターミネータ(T-800)を送り込みます。サラを殺せばジョンも生まれないという訳です。それを阻止せんとジョンに送り込まれたカイル・リース、・・・。

T2』では一転してT-800がサラと少年ジョンの守護者として送り込まれる展開に・・・。そしてその後のシリーズ2作を経て、今回『ターミネータ ジェニシス』が公開されています。

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ターミネーター(T-1000)(イ・ビョンホン

冒頭部分のターミネータとカイルの出現は最初の映画と同じなのですが、しかし彼らが送り込まれた時代は既に書き換えられ、意外な事態が待ち受けているのです。
旧型ターミネーターT-800を演じるシュワルツェネッガーは、ロボットなのに年輪を重ねたいい味を出しています。『T2』以来、老いてなお黙々とサラたちを守るという任務を遂行する姿こそ、私たちが一番感動するところなのでしょう。「やるべきことをやる」のだと。

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ターミネーター(T-800)

正確には覚えていないのですが、サラとカイルの会話の中に、「子供のときからずっと戦争をしてきた。自分の人生を自由に選ぶことなんてなかった」といった言葉がでてきます。この言葉には胸を衝かれます。
平和も、自由に選択できる人生も知らず、戦争という破壊行為の中で育つ子供たちが、この現代にも多くいるのです。

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サラ・コナー(エミリア・クラーク

人間の想像する未来は、確実に一つ一つの要素が実現していきます。想像はやがて創造となり、良いことも悪いことも新しい現実に人々は直面していきます。そこには必ず人間の深い欲望があります。

どんな手段を使っても「もっと多くの」金を儲け、人々を支配し、「国を守る」ことを口実に戦争をし、悪いのはすべて相手のせいにして、人々が望む平和を、そして地球を、国の「核心的利益」のために破壊していくのです。

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ジョン・コナー(ジェイソン・クラーク)(左)とカイル・リース(ジェイ・コートニー)(右)

 

戦争の形態は確実に変わっていきます。核兵器は拡散し、サイバー空間でのウイルス攻撃、宇宙空間での衛星破壊、ステルス兵器無人ドローンなどが主役になっていきます。戦場ではロボット兵器どうしが闘うことになるのが未来の戦争なのでしょう。徴兵制など制定するような国は戦争に負けてしまうでしょう。

人間は有史以来、戦争の技術を進化させてきました。そしてある日突然機械が意思を持つ。人間の宿痾ともいうべき強欲の行き着く果てが機械軍との戦争なのでしょう。人間は自分たちが生み出した強欲の象徴とでも言うべき「スカイネット」と闘わなければならなくなります。

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ターミネーター(T-3000)

時間転送装置(タイムマシン)はさすがに想像の産物でしかありませんが、私たちの眼に見えないところで、「スカイネット」は着々と人間の手によって構築されています。
ホーキング博士らが人工知能兵器に懸念を表明し、ロボット戦争に警告を発しています。「ターミネータ」は、私たちの未来の寓話になっているのだと思います。