遥かなる「知」平線

歴史、科学、芸術、文学、社会一般に関するブログです。

映画 300帝国の進撃

ゼウスはアテネのために木の砦をもって唯一不落の城塁とし、
汝と汝らの子らを救うだろう。
おお聖なるサラミスよ。
デルポイの託宣)
(注)「木の砦」;船(軍船)

 

随分前になるが、友人のノンタと岩波ホールで上映していた『アレキサンダー大王』という映画を見に行ったことがある。二人とも、戦争スぺクタル歴史絵巻を期待して、見る前からワクワクしていた。

が、あまりにも「芸術的」過ぎる内容で、そうした方面には疎く、血沸き肉躍るエンターテイメントを期待していた二人は見事期待を裏切られ、見終わってビルの階段を下りながら、期待との落差に「なんだこりゃ」と大笑いしたのだった。
そもそも岩波ホールがどのような劇場か知らなかった不心得者だったのだが。

 

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2006年の映画『300』は、B.C480年8月に、スパルタ軍のレオニダス王と部下299名が圧倒的なペルシア軍の前に全滅したテルモピレーの戦いを描いたものだ。これこそ期待した戦争スぺクタル歴史絵巻であった。

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そして今回の『300 帝国の進撃』は、『300』の続編に相当するサラミスの海戦を描いたものになります。

 

ペルシア戦役の時系列的な戦闘を記しておきましょう。
映画を見る前に予備知識を持っておいたほうがより楽しめると思います。

B.C490年9月 マラトンの戦い
ダレイオス率いるペルシア軍2~3万が、ミルティアデス率いるアテナイ・プラタイア連合軍1万1千と激突し、アテナイ連合軍がペルシア軍を敗走させる。アテナイ軍192名、ペルシア軍6400名が戦死。
(注)『300帝国の進撃』ではテミストクレスが、敗走するダレイオスに矢を射かける。

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テミストクレス(サリバン・ステイプルトン)

B.C480年8月 テルモピレーの戦い(映画『300』)
B.C480年9月 サラミスの海戦(今回の映画『300帝国の進撃』)

 

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海戦の主要軍船となった三段櫂船(模型)(Wikipediaより)

ギリシャ連合軍】
総指揮;スパルタのエウリュピアデス(『300帝国の進撃』には出てこない)
アテナイの将軍テミストクレスアテナイ艦隊の提唱者。サラミスでの決戦を強く主張し、勝利に大きく貢献。
・主力三段櫂船;386隻
・損害;40隻以上

【ペルシア軍】
総指揮;クセルクセス1世
将軍;マルドニオス
・主力三段櫂船;684隻以上(一説に1207隻、他の船を合わせて3000隻)
・損害;200隻以上

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Wikipediaより

ハリカルナッソスの女王アルテミシアは5隻の艦隊を率いて参加。海戦ではなく陸戦を主張するも周囲に入れられなかった。が、映画ではクセルクセス1世を生み出した冷酷無比な指揮官として登場し、海戦の指揮をとる。

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アルテミシア(エヴァ・グリーン

なんといっても圧巻なのは、海戦や戦闘のリアルさだ。それを可能にしたのはCG技術で、仮想背景と人によるアクションの合成だという。こうした映画は、やはりハリウッドならではのものだ。

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戦争スペクタクル歴史絵巻をエンターテイメントとして存分に楽しみたい方にはお勧めの一作だ。ノンタよ是非見てくれ。『アレクサンダー大王』には悪いが1000倍面白い。

この戦争後、アテナイギリシャ世界の盟主となっていくが、テミストクレスは独善的だったようで陶片追放にあい、ペルシャに保護を求めることもしている。ペルシアにギリシャを攻めるよう求められ、それをよしとせず自死し65歳の生涯を終えた。