遥かなる「知」平線

歴史、科学、芸術、文学、社会一般に関するブログです。

フェルメールからのラブレター展(1)

だから、想いを言葉にのせて、
運命よ、私の未来となるがいい。
(モンモ・カフェオーレ卿)

 

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フェルメール 『手紙を書く女』 1665-66年
ワシントン、ナショナル・ギャラリー蔵

 

あら、私はいったい何を書いているのでしょう。
あの人が、来てくれるかどうか分からないじゃないの。
そうそう、私がきっと勝手にそう思い込んでいるだけ、

あちらにも都合があることだし・・・。

でも、お暇だったら、ってことで書いて差し上げれば、
ひょっとして来てくれるかも知れないじゃない。

いやいや、その日は確か、伯爵様との会合があるって言ってなかったかしら、
・・・・だから、もし予定があるならまた別の機会に、って書けばいいのよ。

 

同じ問いを自問自答して、ペンを持ちつつ書きあぐねている少女よ。
思い描いた先のことが、運命だと思うのか。
時々の言葉なんて、人の心にどれだけ残るというんだ?

言葉よ、お前は風に吹かれて飛び去るのみ、
どんなに手紙に書きとめたって、お前の行き先など定かではないだろうに。

 

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フェルメール 『手紙を書く女と召使』 1670-72
ダブリン、アイルランド・ナショナル・ギャラリー蔵

 

まったく、あいつはとんでもないワルだよ。
いろんな女に言い寄って、言葉巧みに誘いをかける。
浮いた話に乗せられて、ほんとうに、お嬢様はお可愛そうに。

ねえ、ハンナ、なんて書けばいいかしら?
あなたのおっしゃる話を聞いて、どんなに楽しかったでしょう。
それから、それから、どう書こうかしら、ねえハンナったら

ハイハイ、ですから、思ったことを素直にお書きになればいいんですよ、お嬢様。

全く、何人の女が騙されたことか、あんな話を信じるなんて、
オレには、夢があるんですって?
大航海へ乗り出して、世界の財宝を持って帰って来るんだと?
だから、今は諸侯から資金を集めている、だって?

だからね、ハンナ、お父様に頼んで少しばかり出資を頼んでみようと思うの

どうです?お嬢様も一つ、この話に乗りませんか?
必ずや、インドの財宝をお持ちしましょう、だと。
地獄に落ちてしまえばいいんだわ、ハン。

・・・だいたい書いたわよ、う~ん、
最後になんて書いたらいいかしらね、ねえ、ハンナったら

地獄に落ちろ!!

えっ?

 

フェルメールからのラブレター展
2011年12月23日-2012年3月14日 Bunkamura ザ・ミュージアム(渋谷)