遥かなる「知」平線

歴史、科学、芸術、文学、社会一般に関するブログです。

二人で一人 課長と代理

自由な頭脳と健全な意識を与えよ、
さすれば良き政治体制を与えよう。
ボルテール 18C中仏の啓蒙思想家)
啓蒙主義を広めた中心人物。自由な精神の持ち主にして旧体制、旧精神を舌鋒鋭く批判した。
「政治体制」を「組織」と置き換えてみてはいかがでしょう。


根気よく計画を練り、ひたすらそれに努力を傾注すれば、
どんな困難があっても必ず成功するものだ。
(カサノ-ヴァ;18C中 ヴェネツィア出身)
冒険、乱交、逃亡、異端裁判有罪、詐欺など波乱万丈の人生を送ったヴェネツィア人。

 

f:id:monmocafe:20190516210747j:plain


季節は3月から4月へ、サラリーマンにとっては昇進や異動の季節で、送別会や歓迎会が続く。今度は別の部署へ異動になるんだ、と一人で勝手に決め込んで、ウキウキしている人もいる。いわゆる勝手人事だ。

或いは自分の上司が誰になるかは大いに気になるものだろう。
だから、サラリーマンには一大関心事と言っていい。

が、入社以来、モンモは人事異動には正直ほとんど関心がなかった。
ずっとシステム部門だったせいか、異動があってもシステム部門内、どこの部署でもたいした違いはないものを、何をウキウキ、ソワソワなんだ?と、Aさんががどこに行った、Bさんがあそこに行ったと、どうでもいいことのように思えたのだ。

所詮組織など便宜的なもの、考えることが仕事だからと言ったら、身も蓋もないか。
確かに、通常の開発、挑戦的な開発など様々だから、あんなことをやってみたい、こんなことをやってみたいという人はいるだろうし、むしろそれが普通なのかもしれない。

何年か前のそんな季節の異動の話を紹介しましょう。

人事異動の公表は、役職毎にずれる場合がある。
そんな3月のある日、係長・課長代理クラスの異動発表があり、モンモの職場から転出する係長のかわりに、異動してくる課長代理がいた。

普通なら、「今度異動でモンモさんの所へ行きます。宜しくお願いします」と電話一本かけてくるか、モンモの職場に立ち寄って「よろしく」と挨拶するくらい。
しかし、その時はなんと、異動してくるテツを連れて上司のイソ課長が、二人でモンモの所にやってきた。

「こんどテツが、モンモさんのところへお世話になります。宜しくお願いします」と、上司のイソが言うのだ。そしてテツが、イソの後ろから小さな声で「宜しくお願いします」という。

まるで小さい息子に付き添うママのよう。社会人なら一人で来て挨拶するものを、とも思ったが、「ハイハイ、宜しくね」とニコニコと応じていた。
異動は予め調整してあるので、これで要員に過不足なし。

そして次の日、またまた二人が連れだってモンモのところにバタバタと、揃ってやってくるのです。

「モンモさん、モンモさん」
「どうした、びっくりした顔して。何かあったのか」

イソ課長は、目をマンマルにして、息せき切って言うのです。

「私も異動です」
「ふ~ん、どこへ?」
「モンモさんのところです」
「ん、テツにくっついて?ママも・・?」と思わず笑ってしまった。

なーんで、こんなことでテツもイソにくっついて来るんだ?
君らは二人で一人か?
テツは黙って、イソの後ろに今日も控えているのです。

イソの異動はモンモも知りませんでした。
まあ、何でもありの世界がサラリーマン。
少し、からかってやりましょう。

「どうしてイソがモンモの所に来るんだ?」
「さ~、どうしてって言われても」と、本人もとまどっていました。
「そんでさ~、イソはどうしたいワケ?テツと一緒にいたいの?離れたくないの?」
「そんな、いじめないでください」と泣きそう。
「モンモが、イヤだと言ったらどうする?」
「・・・・」

『入るを拒まず、去るを追わず』の慈善家モンモは、二人セットで受け入れたのでした。
それにしても、部長は何を考えたのでしょう。「テツとイソは二人で一人」と考えたのでしょうか。理由は聞きもしませんでしたが、イソママをつけてあげないと、テツが困ってしまうと考えたのでしょうか。まあ、くれるならもらってあげましょう。

カエサルは、人を選びませんでした。せめてそれにあやかりましょう。

そして、時が経ちました。イソはシステム部門外に転出し、可哀想にテツは一人でモンモの職場に残されることになったのでした。さて、その後テツは、いかがしたでありましょうか、それはまた別の話のお楽しみ。