遥かなる「知」平線

歴史、科学、芸術、文学、社会一般に関するブログです。

三浦雄一郎の熱きハート

ゴールの向こうに、新しい自分が待っている。
高野進;元陸上選手。オリンピックファイナリスト)

いったん戦場で自分を見つけてしまった者は、
もうそこから逃れることはできない。
生涯自分のための戦場を求めるようになってしまう。
(浦澤直樹 『パイナップルアーミー』の主人公ジェド豪士)

やり方しだいでは、未来は希望に満ちている…。
藤本ひとみ 『ノストラダムス』 集英社

 

5月23日に三浦雄一郎さんが、史上最高齢の80歳でエベレスト(8848メートル)登頂に成功した。70歳、75歳でも登頂しており、自身3度目の成功となった。

 

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C4からC5へ出発する三浦雄一郎さん(右)と次男の豪太さん (2013.5.24 読売新聞)

23日午前2時15分、8500メートルの第五キャンプ(C5)を次男の豪太さんやシェルパと出発し、約7時間をかけて頂上に到達した。

世界最高の気分です。・・人生、これ以上ないという気分。80歳、まだまだ行ける。これ以上ないというくらい疲れています。頑張って頑張ってたどり着きました。ヒマラヤの素晴らしい景色が眼下に広がっています」と頂上からそう報告した。

4月16日にベースキャンプ(BC、5300メートル)に入り、一ヶ月高度に体を順応させ5月16日にBCを出発していた。

いつだったかTVで、三浦さんの日常を放送していた。筋力を鍛えるため、毎日トレーニングを欠かさなかった。75歳の時と同様、持病の不整脈を事前に2度手術した。
目標を設定し、そのために課題をクリアーしていく。体力の衰えという最大の弱点を、毎日の鍛錬と一カ月の高度順応、登頂速度を遅くするなど緻密な計画と戦略がこの快挙の裏に見てとれる。

帰国後の記者会見では、一時間山頂に居たことが、思いもかけず身体にダメージを与えており、下山時には足が「ふにゃふにゃ」になってやっとのことで帰ってきたと語ったが、これは想定外のことだったのかも知れない。
だから、ただの無謀な老人ではない。
「熱いハート」と「クールな頭脳」。
「目標」と「達成する意志」があれば、「継続的な鍛錬」と「戦略」が、人を「そこまで」到達させる。

かくありたい、と望むものの、「達成する意志」か、「継続的な鍛錬」が、どうもモンモのような凡人には足りないか。

しかし、と思うのだ。
「意志」や「鍛錬」というが、70歳でエベレストに挑戦することを考えれば、60歳代で決意し、トレーニングを始めただろう、以来80歳まで20年以上も続けた計算になる。どうやら、単なる「意志」だけの問題ではなさそうだ。

そのような「意志」を維持するには、「やってみよう」という気持ちが強くなくてはなるまい。新しいことに挑戦し、そこに「新しい自分」を発見したい。それが自分の可能性を開いてくれる。「いったいどんな自分になれるのか」そうした自分自身に対する好奇心が、「意志」と「鍛練」の源泉だったのではないか。
とすれば、「やってみよう」という好奇心を燃やし続ける「熱いハート」こそ、凡人に必要なものかも知れない。

三浦さんは、今後を聞かれ、エベレストの別峰8200メートルからスキーで滑りたいと答えていた。三浦さんの熱いハートは、まだまだ燃え続けている。