イチローの4000本
諦められないんですよ。いろんなことを。
野球に関してはなかなか妥協はできない。
『休みの日は休む』ということができない。
(イチロー)
米大リーグ、ヤンキースのイチローは21日のブルージェイズ戦で日米通算4000安打を達成した。ピート・ローズ(4256安打)、タイ・カップ(4191安打)についで3人目の偉業だ。
もちろん、条件の違う日米通算なので、他の二人と同じ価値か否かは議論のあるところだろうが、偉業には違いない。
2013.8.23 読売新聞朝刊
「4000という数字が特別なのではなく、自分以外の人たちが特別な瞬間を作ってくれると強く思った」
寄せられる祝福に感動しつつも、いつものようにクールだ。
「4000のヒットを打つには、8000回以上は悔しい思いをしてきている」
その悔しさと向き合ってきたからこその記録なのだろう。
米大リーグの「鉄人」といえばルー・ゲーリッグだが、それにならって言えば、さしずめ「哲人」イチローだろう。
「プロはうまくいかなかった記憶が強く残るからストレスを抱える。・・ストレスを抱えた中で瞬間的に喜びが訪れる。それがプロの醍醐味だ」
多くのビジネスマンにも通じるのではないか。
今後、見据えていくものは、と問われて
「これからも失敗をいっぱい重ねていき、たまにうまくいくという繰り返し。打撃とは何か、野球とは何か。少しでも知ることができる瞬間は、うまくいかなかった時間と自分がどう対峙するかによる」
「打撃」を「仕事」に、「野球」を「人生」に置き換えてみてもいい。
大リーグに挑戦した頃、「イチローは大リーグで通用するか」とか、「単にバットをボールに当てるだけならベースボールではない」などと言われた。
しかし、イチローのプレーはアメリカ人を驚嘆させる。アメリカの野球を変えたとも言われた。そして、翌年、開幕戦で相手チームと勢揃いした時、イチローが冗談を言ったら、皆大笑いしたという。
何と言ったかは伝えられていないが、新参の小さな日本人プレーヤーなど一年後には消えているだろうと思っていた彼らに、きっとこう言ったのだ。
"I've been back"(「戻ってきたぜ」)
こうして、イチローは大リーグの選手たちに、ファンに、アメリカに本当に受け入れられたのだと思う。以来、野球を通じて日米友好に大きく貢献した選手となった。
「自分が野球選手として、人間として成熟できているかは、いまだに分からない。そうでありたいということを信じてやり続けることしかできない」
恐らく3年後には、ピート・ローズの記録を抜くのではないだろうか。
哲人イチローの更なる活躍を期待したい。