遥かなる「知」平線

歴史、科学、芸術、文学、社会一般に関するブログです。

過去に生まれし現在

我々の人生は、我々の思考によってつくり出される。
我々の思考が現在をもたらし、未来を決める。
パスカル

簡単なことをすぐやるというのは、
戦略としてほぼ意味がないからやめた方がいい。
(和田浩子「P&G式世界が欲しがる人材の育て方」からの要約)

頭のなかにしかないあいだは、いつだって、
どんな天才的な着想だって、
ひとからは無茶だの無謀だのって云われるものなんだ。

明日の食いぶちのことばかり苦に病んで汲々としているやつら、
おのれの身の安全だの、ちっぽけな出世だの、
ほんのちょっとした欲望だの・・・

そんなものにばかり血道をあげて
でかいこと、危険なこと、おのれの器をこえたことなど、
てんから理解しようともしねえやつら。…

そういうやつらには、何があろうと決して、
真に偉大な魂の見る夢なんてものは理解できねえだろう。…

やつらは現世しか見ない…やつらは、この世の中が、
ひとの、それもひとりの個人の力でちょっとでも変わるだろうなんて、
はなから、頭っから、信じちゃいねえんだ。

本当は国だって組織だって、いまこうしてここにある何もかもだって、
遠い昔に誰かが作ったものなんだ
栗本薫グイン・サーガ』よりイシュトバーンの言葉)

 

先日、家の購入時に入った長期火災保険が満期となるので、その保険の幹事会社と同じSJ社の保険に入った。

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20代後半から30代前半とおぼしき営業社員が来て、2つのプランを説明し、地震保険はどうするか、特約の有無を相談し、保険料を試算しながら契約の手続きをしたのだが、彼が携えてきたのはPCアウトプット3枚の企画書(A4版)、火災保険のパンフレットとモバイルノートPC。

こちらの質問に、彼はPCで試算しながら答え、説明し、
「これでいいですよね」
とPCの画面をスクロールさせながらモンモに確認させ、
「よろしければ確認のクリックをお願いします。これだけはお客様でなければだめなんです」
と促され、契約者本人がクリックしたとどうして保証できるのだろうと思いつつクリックすると、
「はい、これで一週間後くらいに証券が届きます」
と手続きは一時間もかからず終了した。
手書きで書いたのは金融機関へ送る「口座振替申込書」だけであった。
紙の保険申込書に記入することもない。

ふ~ん、どこの保険会社も同じようなものなのだろうが、一昔前とは手続きのプロセスは様変わりしている。
直接インターネットで保険加入する場合(ダイレクトインシュアランス)を除けば、代理店や営業社員が契約者にとって最適な保険設計を行うのが一般的だろう。
今回のようなケースばかりではないにしても、こうした手続きが一般的なら、随分と効率的になった。
・3~4枚がセットになった申込書が無くなった。イメージスキャンも不要。
・申込書の記入ミスやコンピュータ入力・チェック・訂正作業が無くなった。
・保険会社の紙台帳(イメージ電子台帳)の保管・管理が無くなった。
・分かり易いマンマシンインターフェイスになった。
 PC画面は申込書イメージから解放され、スクロールしながら必要な項目だけを入 力し、顧客に不要な項目は画面上にはない。
・契約者は、申込書に印鑑を押す代わりに、PC確認画面のクリックを行う。
今回は新規契約で加入したのだが、満期継続の時はもっと簡便な手続きで済み、もちろん継続申込書も無くなっているだろう。

20年近く前に考えた営業活動の姿の一つが、ここに出現している。
社員にも難しいとされる保険のロジックをシステムに閉じ込めて、それをモバイル端末から引き出しつつ顧客にサービスを提供する営業。
コンピュータシステムをめぐる環境が、やっとこうした営業活動を可能にする時代になっている。事務処理でも、本当の意味でのペーパーレスが実現しつつあるのだろう。

 

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過去にイメージし構想したものは、誰かが実現する。
「現在」とは、既に過去となった構想の産物だ。10年後、20年後の新しい未来を手に入れたいなら新しい姿を既に構想していなければならない。
既に過去となった現在を追い求めても未来は手に入らない。
他社に追随することは、過去を追うことと同じだからだ。

「顧客第一」を標榜する会社は多いが、システム化された簡単な手続きで顧客が求める最適商品を設計し、事務コストを下げて保険料を下げることこそ真の「顧客第一」主義なのだと思う。

保険やPCのこと、システムのことをやたら詳しく質問したせいか、彼は次第に怪訝な顔を見せながら、
「モンモさんは何をしている(た)んですか」と聞く。
「ええ、まあ、その~、実は・・・」
答えを聞いた彼は
「早く言って下さいよ、あ~緊張する」と、二人で大笑い。

質問にも的確に答えてくれた彼は、代理店の父親を継ぐべく2年前に不動産会社からSJ社に入社したのだという。
モバイル端末に商品知識とロジックを詰め込んで、2年目ながら自信をもって営業をしている。これからきっと成績をあげていくことだろう。