遥かなる「知」平線

歴史、科学、芸術、文学、社会一般に関するブログです。

なでしこの天国と地獄(2015年W杯)

天国へ行くのに最も有効な方法は、
地獄へ行く道を熟知することである。
マキャベリ


サッカー女子ワールドカップ勝戦を前に夢をみた。
アメリカとの実力差を考えたゲームプランの夢だった。

前半開始直後からアメリカは必ずや攻勢に出てくるから、ゾーンディフェンスでゴール前に網をかけ、時おりカウンターで速攻を仕掛ける。アメリカも戸惑う「なでしこらしくない」サッカーを後半15分まで続ける。

その後の30分で、アメリカが攻め疲れて足の止まった頃に岩淵を投入していつものサッカーに切り替える。延長戦を見据えて交代枠2人を残しておき、延長戦タイミングをみて澤を投入する。
しかし、正夢とはならなかった。

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サッカーはよく「天国と地獄」に喩えられる。
W杯カナダ大会は、「なでしこ」にとってそれを象徴する大会となった。
大会前のなでしこの下馬評は決して高くなかった。世界ランキングの上位3チームと別グループになったこともありクジ運に恵まれたとも言われた。それでもなでしこと対戦したイギリスやオーストラリアが弱かったわけでは決してない。3位決定戦では、なでしこに敗れたイギリスがドイツを破っている。

 

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アメリカとの決勝戦、前半16分までに4失点は余りに大きかったと言うべきだろう。守備のリズムを作る前に、怒涛のアメリカの攻勢を凌ぐことができなかった。
ロイドのスピードについていけなかった。

悔やまれるのは、DF岩清水のクリアーミスからの失点と、GK海堀が前に出ていたところをロングシュートで狙われた失点だ。集中力が足りなかったり、相手ボールからの距離が遠いからと油断すれば、アメリカには通用しないことを選手たちは頭に刻み込んだだろう。

グランダーなボールを入れてくるセットプレーなどアメリカも日本を良く研究していたようだ。試合前日のなでしこの練習模様は全公開。対してアメリカは非公開だったから、最後まで気を抜かなかったアメリカの執念が勝ったと言っていいかも知れない。

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それでも大会を通し、なでしこはよく戦った。
ボランチ宇津木の献身的な守備からのボール奪取、FW大儀見大野の疲れを知らないプレス、岩淵は前回大会より逞しくなって接触プレーでも容易には倒れなくなった。本来のパスワークに加えて、左右前線への大きな展開を織り交ぜて、準決勝までの一点差の勝ち方は熟練の試合運びを思わせた。

ロイドのようにスピードのある選手が背後からスペースに走り込んで来る対策、イギリス戦と同様に鮫島選手の背後を再三狙われることへの対策など、作戦面でも相手チームの分析と対策が今まで以上に必要になるだろう。

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イギリス戦での劇的勝利という天国と、アメリカ戦完敗という地獄を二つながら味わった選手たち。勝利に喜ぶアメリカの選手たちを無言で見つめる選手たちの悔しさこそ、明日への糧になるだろう。

アメリカだって前回大会の悔しさを糧に、ロンドン五輪、ワールドカップ金メダルを連取したのだから。
準優勝の悔しさを糧に顔をあげて、次の「なでしこ」への再出発としよう。

アメリカ優勝おめでとう、そしてなでしこ準優勝おめでとう。
両チームの健闘を讃えたい。