遥かなる「知」平線

歴史、科学、芸術、文学、社会一般に関するブログです。

スターウォーズ『スカイウォーカーの夜明け』

いつだって、準備など出来なかった。
スターウォーズEP9『スカイウォーカーの夜明け』

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シリーズの第一作目スターウォーズ新たなる希望』(EP4)が上映されたのが1977年(日本公開1978年)、それから42年の歳月が流れ、『スカイウォーカーの夜明け』(EP9)で全9話が完結した。

上映順とストーリーの時系列が異なるので、改めて整理すると以下のようになる。
(〇内の番号が上映順、EP番号がストーリー順。第一部~三部は筆者による分類)

(第一部)
④EP1『ファント・ムメナス』1999年
⑤EP2『クローンの攻撃』2002年
⑥EP3『シスの復讐』2005年

(第二部)
①EP4『新たなる希望』1977年(日本公開1978年)
②EP5『帝国の逆襲』1980年
③EP6『ジェダイの帰還』1983年

(第三部)
⑦EP7『フォースの覚醒』2015年
⑧EP8『最後のジェダイ』2017年
⑨EP9『スカイウォーカーの夜明け』2019年

当初から、最初の作品は全9話の4番目に当るのだと説明されていた。でもまさか、9話全部が映画化されるとは筆者も思っていなかった。だからEP1『ファントム・メナス』が1999年に公開されたときには、本当に全部やるつもりかも知れないと嬉しくなったものだった。

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日本では、とりわけ文学の世界で、「物語の喪失」が言われていた。きっとそれは、マネーゲームの後に続いたバブル崩壊によって二極化が進み、中間層が薄くなっていったことと無縁ではなく、その過程で、行き場をなくした精神が、狭く小さく先鋭化するしかなかったのだと勝手に解釈していた。

しかし一方で、文学の中では主流ではなかったであろうSFの世界で、栗本薫グインサーガ(全130巻未完、外伝22巻)や田中芳樹銀河英雄伝説(全10巻、外伝5巻)などのSF大河小説が書き継がれていた。
そう物語は、SFの中でしっかりと息づいていたのだった。

そして映画の世界、それもSFの中に、私たちは「物語」を見出すことになった。
スターウォーズ』がそれである。

一つの映画がヒットすれば、その続編が作られる。二匹目のドジョウを狙うからだ。しかし、『スターウォーズ』は、初めから3作づつ3回の全9話と設定されていた。初めから映画のストーリーを、ジョージ・ルーカスがどこまで創り上げていたかは分からないが、42年以上をかけて一つの物語を創り終えたことはやはり偉業と言わねばならない。(最後の3作品の製作にはルーカスは関わっていない)

しかし、途中から観た人たちにとっては、単なる続編の映画だったという人もいただろう。それでも、やはりスターウォーズは伝説的な映画であると言わなければならないように思う。

アナキン・スカイウォーカーダース・ベイダーとなる経緯を知らぬまま、テーマ曲とともに現れた彼の姿を初めて観た人は、きっと衝撃を受けただろう。それゆえに、ジョージ・ルーカスは、シリーズ第一作目(EP4)にダース・ベイダーを登場させたのだろう。
かくして、物語の伝説はここから始まったのだった。

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スターウォーズ第二部 ダース・ベイダーアナキン・スカイウォーカー

そして今回のEP9『スカイウォーカの夜明け』は、全9話からなるスターウォーズ・サーガの最終章となる。

前作のクレイトの戦いで壊滅的打撃を受けたレジスタンスは、再起をかけて惑星エイジャン・クロスに逃れた。ファースト・オーダーを率いるカイロ・レンは、ファースト・オーダーの起源を求め、レイもまたジェダイの文書を手掛かりに、ファースト・オーダーの背後にいると思われるシスの拠点を探そうとしていた。

そしてレイ自身の驚くべき出自が明らかにされ、レイは自分が何者であるか知ることになる。フォースによるコンタクトの中でも戦いを続けるカイロ・レンとレイ、二人の決着はどのような結末を迎えるのか。そして、ファーストオーダーとは別の恐るべき勢力との戦いに、レジスタンスはどう立ち向かうのか。

スターウォーズ』サーガは、いくばくかの寂寥感を伴いつつ、ここに終焉を迎えることになる。

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自然のエネルギーに心を開き、それを受け入れよ。
バランスを保ち、フォースに身をゆだねよ。

怒り、憎悪、極度の不安に捕らえられれば、フォースの暗黒面に堕ちる。
悪もまたパワー、フォースの裏面でしかない。

善と悪、正と邪、専制と自由。
この分かりやすい二項対立に、勧善懲悪のストーリーを重ねる。

子供はこの映画を観て、「正しさ」は常に挑戦されることを知り、この世は必ずしも「真っ当」ではないことを理解し始める。
大人は、だからこそ「正しさ」や「自由」のために、試練を受けても「強く真っ当ではないもの」と戦わなくてはならないとわが身に言い聞かせる。

レジスタンス」という火花を見るからこそ、必ず後に続くものが現れる。
彼らが戦うからこそ、自らも信じるもののために戦おうと思うのだ。
そうやって、試練克服の物語を自らに宿して、いくばくかの人生を生きていく。

できることもあり、できないこともあるが、せめて「レジスタンス」の焔を消してはならないと、自らを鼓舞することもあるだろう。

そうやって、それぞれの人生の内奥で、「スターウォーズ」の火種を守り続ける。
そんな人たちへ、私もまた挨拶を贈ろう。

「フォースと共にあらんことを」

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