遥かなる「知」平線

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難問中の難問 「リーマン予想」に挑む天才たち

随分前に、NHKスペシャルで、リーマン予想についての放送があった。
見ようと思っていて逃し、会社の同僚にに話したら、BSハイビジョンで再放送やるよと教えてくれた。さすが数学科出身だけあって、興味があって見ていたらしい。

「1、2、3、5、7、・・・・」 「1」と「それ自身の数字」によってしか割れない数、素数。その並びにはどんな意味が隠されているのか。
素数の魔力に囚われた人たちの話である。

 

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18世紀、オイラーは、大きな数の素数を調べた。小さな数同様に、素数は気まぐれに表れる。その並び方には規則性もない。しかし、彼は素数だけの式から、πが現れる式を発見した。ただのきまぐれな数の並びと思われた素数が、πと関係している。

これはどういうことだ?
素数は、ただの無秩序な存在ではないとわかったのだ。

19世紀、ガウスは1~300万までの素数を計算し、自然対数表との関係を見つけた。自然対数表は、中心かららせん状の点への直線距離とらせん状の道のりの関係を表した表である。

直線距離を道のりで割った数が、その値の近くの素数に、数が大きければ大きいほど誤差が小さくなり、いずれぴたりと一致するのではないかと考えられた。

ここに、もう一つのe(=2.7182・・・)との関係が出てきたのである。
自然界に存在するπとeが、素数と関係していることが分かってきたのだ。

そしてリーマンは、オイラーが作った素数の式に似た関数(ゼータ関数)を手段として、その関数のゼロ点を調べた。なんと、ゼロ点は一直線上に並んでいることを発見した。

ここに、「素数の並びに意味はあるか」の問いは、
素数の式からなるゼータ関数の全てのゼロ点は、一直線上にあるか」
という数学の問いとなったのである。

リーマン予想;「ゼータ関数の非自明なゼロ点は、すべて一直線上にある」。
これが、現在の数学の難問の中でも格の違う難問と言われるものである。
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ゴットフレイ・ハーディジョン・リトルウッドは、難しいと思う理由がないと挑み、しかし「リーマン予想はもともと正しくない、間違っている」と言うようになり、「予想が間違っているなら、人生は楽だ」と言って証明に挫折した。

ノーベル経済学賞をとった数学者ジョン・ナッシュ
彼に対する博士号への推薦で、彼の指導教官は推薦文に次のように書いた。「この男は天才である」。なんでも数学の難問を4つも解いたのだという。しかし、リーマン予想の講演の最中に、突然しどろもどろになり、統合失調症を病むに至った。

以来、リーマン予想は、数学者のキャリアを一撃で破壊する、とまでいわれるようになる。

第二次大戦中、独の暗号エグニマを解いたアラン・チューリング
今度は彼がこの難問に挑む。

巨大な計算機マークⅠを作り、リーマン予想が間違いであることを証明しようとした。ゼロ点が並ぶ直線の近傍をしらみつぶしにサーチし、一つでも直線外にゼロ点を見つけようとした。

しかし、3カ月間も探したあげく、直線上以外にゼロ点を発見することはできなかった。2年後、青酸カリを含んだリンゴを一齧り、謎の自死を遂げる。

そして、リーマン予想に立ち向かうことは、自殺行為だといわれるようになる。

1972年プリンストン高等研究所。ヒュー・モンゴメリミシガン大学)は、直線上のゼロ点の間隔が、均等に並ぶ性質があると、ここで知り合った素粒子物理学者のフリーマン・ダイソンにその式を見せた。ダイソンは、その式を見て「ウランの原子核のエネルギー間隔に似ている」と言った。

モンゴメリは、気が動転した。素数が、自然界の法則を明らかにする物理学とつながっている。

こうして、素数は、ミクロの世界につながっているのではないかとされるようになり、それまでタブーとされたリーマン予想の研究が俄かに活気づき始めた。

1996年シアトルで大会議が開催された。
その会議の場で、フィールズ賞受賞者であるアラン・コンヌは、突然閃いた。
それは、空間に関した問題を扱う非可換幾何学と一致する、と。
空間の非連続⇒量子物理学⇒万物理論の基礎になると期待されたのである。

非可換幾何学を使って素数を理解すれば、それは、万物理論も完成するのではないか。

素数の並びの背後にある意味は、もはや宇宙、世界の成り立ちに深く関わっているのではないか。ただの数の並びではなくなったのである。
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2009年8月、フランスの数学者ルイ・ド・ブランジュ(77歳)は、4回目の「リーマン予想証明」を宣言した。

「今度こそ自信がある。例え間違いでも証明に挑む。
なぜなら、最大の難問に、常に挑み続ける数学者でありたいから」

そう言って、口笛を吹きながら散歩に出るのである。
「狼少年」と言われてもなんのその、その歩みはどこまでも軽やかだ。

 

(注)上記内容は、筆者自身ぜんぜん理解せずに書いているので悪しからず。
   訳のわからない難解な世界、でも天才だけが許される世界には憧れます。

(追記)オリジナル記事の一部文章を修正・削除しています。(2019年4月30日)