遥かなる「知」平線

歴史、科学、芸術、文学、社会一般に関するブログです。

脳と幽体離脱

脳には1000億個の神経細胞があるといいます。医学・生理学賞でノーベル賞をとった利根川進さんは、人間にとって「脳」は、最後の研究フロンティア、という主旨のことを話していましたが、随分と研究が進んだとはいえ、人間の脳はまだよくわかっていません。

今回は、そんな脳の不思議な話を紹介しましょう。

f:id:monmocafe:20190501152616j:plain

【人は、顔の左半分しか見ていない】

顔だけを写した男性と女性の写真を使って、それぞれ左半分、右半分を入れ替えた合成写真を使って、どちらが男性で、どちらが女性かを聞く実験をすると、顔の左半分で男女の区別を判断しているということがわかります。

人の顔を認識するのは、自分の側から見て、相手の顔左半分、自分の側から言えば、相手が自分の顔を認識するのは自分の顔右半分。少なくとも右利きの人の大多数が、そのように見えるという実験結果です。

モナリザの微笑み」が、名画なのは、微笑んでいるのが右側で、人が認識する左側は微笑んでいないから。きっとレオナルド・ダ・ヴィンチはこのことを知っていたのではないかといいます。

どうしてそのようなことが起こるのでしょう。
それは、脳には右脳、左脳があってその機能が左右対称ではないからです。
左脳には、ウェルニッケ野ブローカ野という「言語野」があり、イメージや映像は、右脳がつかさどる。脳が支配する体側は左右交差するので、左の視野から入った映像は右脳にイメージとして届くというのが、説明です。

スーパや八百屋でも、特売品やセール品を、人の流れに対して左側におくと目に止まり易く、販売数も伸びるという話があるそうです。

女性のみなさん、人の顔を半分しか見ていないなら、朝時間がなくてお化粧の時間がないときは、人から見て左半分(自分の右半分)だけ化粧すればいいということですね。

ただし、化粧するのに鏡を見ますからご注意を。

写真で見れば、念入りに化粧すべき人の顔左半分は左側(その人にとって右側)にある。鏡で見る姿は、写真で見る姿とは逆なので、鏡に映る左側は自分の顔の左側。
お間違えのないように。時間がない時、一度、試してみてはいかがでしょう。

【脳と幽体離脱

頭頂葉後頭葉の間に角回という部位があります。ここを刺激すると、誰かが後ろにいる感じを持ちます。ちょうど人気のない墓地などを歩いているとき、誰かが後ろにいるザワザワとした恐怖を感じますがそれと同じらしい。

でも左手を動かすと、後ろの誰かも左手を動かす。右足を動かすと、同じように右足を動かす。後ろにいるのは、誰あろう自分自身なのです。いわば、自分自身の「心」を残して、身体が後ろにワープするということです。

そして、特に右脳の角回を刺激すると、自分自身を2メートルくらい上から見下ろすようにできる。いわゆる幽体離脱、専門的には「体外離脱体験」というらしい。こんどは、「心」が体外にワープする。
誰でも一生に一度は体験するらしいのですが、実験でほぼ確実にこうしたことを起こせるといいます。

一流のサッカー選手は、試合の中で、あたかも上空から俯瞰するように試合状況を見れるといいます。また、「できる」先輩などから、第三者が自分をみるように行動しなさいと、言われることがあります。きっとこうしたことも、角回と密接な関係にあるのではないでしょうか。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
こんな話しを、同僚に話したら、なんと彼は「幽体離脱」をしたというのです。
「2メートルくらい上から、寝てる自分を見て、戻らなくちゃと思った」という。
私が、「どこかに行って見ようとは思わなかった?」と聞くと。
「思わなかった」と即答。戻れなくなったらどうしよう、という思いのほうが強かったようです。
他の話は、また別の機会にいたしましょう。

【出典】
池谷祐二 『単純な脳、複雑な「私」/または、自分を使い回しながら進化した脳をめぐる4つの講義』 朝日新聞社
今回紹介する話し以外のたくさんの脳についての話とそれに対する知見が書いてあります。著者の出身高校の生徒に行った特別講義なので、脳に関心のある高校生には特にお奨めの本です。